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介護・シニア
カラオケで介護予防…自治体事業、体動かし気持ち前向き
介護予防事業にカラオケを活用する自治体が増えてきた。歌いながら体を動かすプログラムなどで、高齢者の健康増進につなげる。
楽しみながら取り組めるので、自宅にこもりがちな高齢者の外出のきっかけにもなりそうだ。
10月下旬、東京都清瀬市の「コミュニティプラザひまわり」の一室は熱気に包まれていた。汽車の窓から ハンケチ振れば 牧場の乙女が 花束なげる――。66歳から93歳の男女約40人が、カラオケで歌謡曲「高原列車は行く」を熱唱しながら、テレビ画面に映し出されるモデルの動きにあわせて手を振ったり、ステップを踏んだりした。
この教室は、同市が6月に始めた介護予防事業の「脳トレ元気塾」だ。市内3か所で週1回開かれ、参加費は1回200円。医師や音楽療法士らの意見を参考に作られた、歌いながら体を動かすプログラムなどが内蔵されたカラオケ機器を使うのが特徴だ。
教室では約1時間半、音楽療法士の小川美穂さんらが見守る中、合唱しながらの体操のほか、童謡「かもめの水兵さん」の歌詞を「パ・タ・カ・ラ」の4語に置き換えて歌う
同市地域包括ケア推進課の関口美智子さんによると、歩くのにシルバーカーの支えがいらなくなったり、人目を意識しておしゃれするようになったりする人も出てきた。「皆さん、表情がいきいきとしてきた。参加者同士の会話や交流も増えている」という。
一般社団法人全国カラオケ事業者協会(東京)によると、音楽に簡単な体操プログラムを組み込むなどしたカラオケ機器は、2000年代前半から介護福祉施設を中心に導入されてきた。
近年、脳機能の活性化やストレス軽減、唾液の分泌量の増加に伴うドライマウスや感染症の予防など、健康や生活の質の向上に役立つとの研究報告が増え、自治体の介護予防教室にも取り入れられるようになった。「健康寿命を延ばし、医療や介護の費用の削減につなげたいという思いもあるだろう」と同協会は指摘する。東京都町田市や福井県坂井市、福岡市などでも、清瀬市と同様の事業が行われている。
長野県松本市は昨年、試験的に導入したところ、従来の介護予防教室よりも、男性の参加者が多かったことから、今年は定年退職した男性を対象に実施している。同市では「女性に比べて、閉じこもりがちとされる男性の社会参加や、生きがい作りに活用できるかどうかを検証したい」としている。
カラオケを活用した介護予防事業について、鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎さんは「カラオケは多くの人が慣れ親しんできたもので、楽しみながら続けられる。健康面の効果に加え、人が集まることで、仲間作りやコミュニティーの活性化も期待できる」と話す。(斎藤圭史)
◇カラオケを楽しみ、健康維持につなげるコツ
・好みの歌や懐メロを心を込めて歌う。気持ちが前向きになり、思い出に浸れる。口ずさむだけでもよい
・集団で一緒に歌うと、孤独感の解消につながる。時には男女でデュエットもいい
・鳴子や鈴などの楽器を使うと、軽い運動になる
・加齢によって声が低くなっているため、カラオケ機材の曲の音程を下げる
・声帯など体に負担がかかるので歌いすぎない。1曲歌ったら小休止する
(小川さんの話を基に作成)
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