茂木健一郎のILOVE脳
yomiDr.記事アーカイブ
リバウンドした体でフルマラソン完走は可能か
さてさて、このコラムの以前からの読者の中には、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
最近、体重の数値が書いてないぞ。
確か去年の今頃は、体重をどうやって減らすかとか、グラフがたくさん出ていたのに、最近出ていない。
アヤシイ……
そうです。ご名答、アヤシイのであります(笑)
というのも、83kgから73kgまで、10kgの減量に成功し、東京マラソンも完走することができたこの不肖、「元デブ」こと、茂木健一郎でありますが、油断している間に、恐ろしい事態が進行していたわけであります。
それは、つまり、「リバウンド」。
食事制限もせず、腕立て、腹筋の筋トレもさぼっていた結果、体重はあれれという間に増えて、実はちょっと情けないことになっているわけであります。
(毎日数値は記録しているのですが、こわくてグラフにしていません(笑)。そのうち、勇気が出たら、グラフにしてみなさんに公開します)。
つまり、「元デブ」が、「またデブ」になりつつあるわけですね。
ある秋晴れの日、私は考えました。
来年2月28日の東京マラソンに、私はエントリーしている。しかし、このままでは、走れないんじゃないか。完走できないんじゃないか。
確かに、走ることは走っている。シカゴでも走ったし、久留米でも走った。しかし、今のように、リバウンドしたままスタートラインに立って、舛添要一東京都知事の号砲でうわーと走っていったとしても、このままでは、体重の負担に足が耐えかねて、途中棄権の憂き目にあうのではないか。
自業自得とは言え、それでは、あまりにも悲しい結末ではないのか。そんなことでいいのか!
とくと考えた私は、「ようし!」と思いました。
走っちまえ!
突然だが、今日、これから、フルマラソン走っちまえ!
You、フルマラソン、走っちまえよ!
「実験で」走り始める
そうかあ、走っちまうかあ。
幸い、午前中から午後早くの予定が空いていたので、私は、おっちらおっちら走り始めました。
走りながら、自分に言い聞かせました。
これは、今の体重でどれくらい走れるかの、実験だからね。
実験だから、いつ止めてもいいんだからね。
よく晴れた日で、気温が20度を上回るだろうという予想。
汗をかくので、途中の公園で給水します。水飲み場にも、秋の気配が(写真1)。
今までの経験から、飛ばし過ぎると、足にきて、絶対に完走できません。
なので、ゆっくりゆっくり。あわてない、あわてない。
そんなこんなで、いつの間にか、ハーフマラソン(21.0975キロ)の距離を走っていました(写真2)。
タイムは2時間7分1秒。
まあ、順調です。
問題は、ここからでありました。
とりあえず、早めの給水、栄養補給を心がけるかと、スポーツドリンクとバナナをコンビニで買います(写真3)。
とりあえず、芝生の上で「小さな昼食」を済ませようと座ると、案外、自分が疲れていることに気づきました(写真4)。
があん。
オレ、案外疲れているじゃん!
こういう時には、脳に、「これは効くんだ!」と言い聞かせる、プラシーボ効果が大切。
バナナの「説明書」を、丹念に読みます(写真5)。
そうか、これは、高原で栽培しているから、昼夜の寒暖差によって、甘いのか!
表皮に、茶色い斑点(シュガースポット)が出てきた時が、食べ頃なのか!
うーん、何だか、効くような気がしてきた(笑)。
ウキーッ! バナナを食べて、気合を入れます(写真6)。
後半は地獄…
さあ、気を取り直して、後半、出発!
いやあ、この後が、地獄でした(笑)。
30キロの手前で、足が、次第に痛くなってきます。
やはり、リバウンドのオーバーウェートが、じわりじわりと足に負担をかけていたのか。
よく晴れた日で、空気は気持ちよく、モンシロチョウなども飛んでいたりするのですが(写真7)、そのようなのんびりとした雰囲気とは程遠い、わが足の惨状。
いや、これは、もうムリだ、と、リタイアの誘惑が何度もやってきました。
なにしろ、これは、自主的な「無茶振りマラソン」。
誰も見ているわけではないし、歩いても、別に問題はない。
それでも、何かが、私の背中を押します。
いや、ここで立ち止まってはダメだ! 走るんだ、走るんだケン!
35キロあたりで、最後の給水。
なんとなしに効きそうな、オレンジジュース(写真8)。
「果汁40%」と書いてある、そこに疲労回復への願いを込めて、ごくごくおいしくいただきました。
そこからは、最後の激走。
ときどきトボトボ歩いたりしながらも、なんとか、トコトコ走り、走り、走り、走って、ついに完走しましたよ。
42.195キロ! タイムは、4時間38分1秒(実際の計測は、ちょっと過ぎて42.21キロになってしまいました)(写真9)。
やれるんだ。リバウンドのデブでも、いきなりフルマラソン、走れるんだ!
それは、それで、心強かったのですが、やはり、思いました。
こんなに苦しいのは、イヤだ。
やっぱり、体重減らそうっと。
そうです、みなさん、このままじゃアカンと、理屈でなく、身体でわからないと、体重なんて落とせるものではありません。
私は、身体で感じましたよ。リバウンドは、ヤバイって。
減らします、体重。