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高齢者が注意すべき薬…安易な長期投与に警鐘

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 日本老年医学会が4日、10年ぶりの改定となる「高齢者の安全な薬物療法指針」を決定し、主要部分をホームページに公開した。指針は医師向けだが、高齢者に有害な副作用が表れやすい「特に慎重な投与を要する薬」のリストをまとめており、超高齢社会の安易な薬の処方に警鐘を鳴らしている。

 不眠、認知症、高血圧、糖尿病、足腰の痛み……。高齢者はさまざまな持病を抱え、多くの薬を長期間飲み続けていることが多い。一方で、薬の成分を体外に排出する機能が落ちて、副作用が出やすくなる傾向がある。

 そして、薬のなかには、特に、高齢者が飲むと有害な副作用を起こすリスクが高いものもある。指針には、そうした薬への注意を喚起する狙いがある。

 同学会の作業部会は、10年ぶりの指針改定に当たり、改めて国内外の2000を超える論文を分析したうえで、注意すべき薬の一覧を見直し、4月に指針案を公表。その後、関係学会や医療関係者などから寄せられた意見も踏まえて修正を加えた。

 指針の主な対象患者は、75歳以上。ただし、75歳未満でも、体力が著しく低下した高齢者は含まれる。基本的に、1か月以上の長期処方を問題にしている。

 「特に慎重な投与を要する薬」のリストには、約30種類の薬が、主な副作用とともに掲載された。

 例えば、睡眠薬では、認知機能の低下やふらつき、転倒を招く危険などが指摘されている。

 抗精神病薬を、認知症患者の徘徊や暴力を抑えるために投与した場合は、手足のふるえなどの神経障害や認知機能の低下のほか、脳血管障害の発症と死亡率の上昇などが挙げられている。

 いろいろなタイプがある糖尿病薬については、低血糖など、それぞれの種別ごとに出やすい副作用を示している。近年発売された新しい薬の情報もある。

 指針では、これらの薬について、別の薬に変更したり、使用期間を短くしたりするなど、対処法も提案している。

 ただし、指針をまとめた東京大教授(老年医学)の秋下雅弘さんは、「患者が自己判断で薬をやめると、急激に悪化する危険もある。自分や家族が使っている薬に疑問を感じたら、必ず主治医や薬剤師に相談してほしい」と話している。

 実は、4月に公表された指針案の段階では、このリストの名称は、「中止を考慮すべき薬」だった。しかし、在宅医や患者家族から「禁止薬のような印象を受ける」「全く使えなくなると困る」などの意見が寄せられたため、結局、「特に慎重な投与を要する薬」という名称になった。

 とはいえ、「基本的に、このリストにある薬を安易に長期投与するのは望ましくない、という当初のメッセージに変わりはない」(秋下さん)。

 例えば、高齢者の訴える不眠では、就寝時間が早すぎて、未明に目を覚ましているケースも少なくない。秋下さんは、「高齢者の治療においては、薬に頼るだけでなく、生活習慣の見直しなどの工夫が必要だ。指針には特に注意を要する薬を挙げているが、一方で、薬の種類にかかわらず、高齢者が5種類以上の薬を飲み続けていると転倒のリスクが増えるというデータもある」と指摘している。
(高橋圭史)

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