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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

医療・健康・介護のコラム

第19話 生命保険――同性カップル排除の「象徴」が動いた

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2親等規定で、同性パートナーは拒否

 前回、渋谷区のパートナーシップ証明、世田谷区の宣誓書をご紹介するとともに、企業などの問い合わせも増えているとお伝えしました。ここに来て、保険業界からの動きのニュースが相次いでいます。

 これまで同性カップルの場合、パートナーを自分の死亡保険金の受取人に指定することができませんでした。国内・外資を問わず保険会社は、受取人は「配偶者および2親等以内の血族」であることを求めており、法律上なんの規定もない同性パートナーはそれに当てはまらないためです。

 このいわゆる2親等規定は社の内規的なもので、法律に根拠があるものではありません。むしろ契約自由の原則を制限しているともいえるでしょう。

 なぜ各社がこうした規定をもっているのかは、往年の保険金殺人の影響や、それをふまえて監督官庁から指導や通達があるなどが言われていますが、詳細は不明です。

 しかし、こうした保険会社の対応は、「生命保険にも入れない同性カップル」として、同性愛者に強いられる生活不安、将来不安、そして2級市民視の象徴と、多くの当事者に受け止められてきました。

 とくに2親等規定が法律でもなんでもない、保険会社の内規的なものにすぎないだけに、「なんで保険に入れないの?」」という声には根強いものがありました。事実婚夫婦などへの対応を援用して同性パートナーを指定できた体験記がネットなどで流れると、大きな関心や反響が起こるのが常でした(担当者の個人的努力でなんとか通せたようで、そこが法的規定ではない、内規の内規たるゆえんでしょう)。

同性カップルへ保険会社が動きはじめた

 このように、「生命保険にも入れない同性カップル」ですが、行政による同性カップルの公認制度が伝えられるや、保険会社のなかに同性パートナーの指定を認めると発表するところが出てきました。自分から率先して変えることには及び腰な企業にも、前回書いたように、「立場のある人が口火を切ればあとは早い、日本社会らしい変化」が起ころうとしているのかもしれません。

 新聞等で伝えられるところでは、

  • ・日本生命は、渋谷区のパートナーシップ証明書があれば受取人として認める予定。
  • ・アスモ少額短期保険は、渋谷区や世田谷区の証明書などの写しがあれば、受取人として認める。
  • ・ライフネット生命保険は、独自の条件で事実婚も受取人に認めてきたが、それを同性カップルにも拡大する。11月4日から開始する。

 とのこと。

 ニッセイは、渋谷区在住の証明を受けたカップルに限定しており、証明書の前提にある公正証書を重視したようです(世田谷は除外していますから)。アスモは渋谷と世田谷の両区で証明等を受けたカップルに対応するとしています。公的承認を尊重したかたち。一方で、ライフネットはエリアに関係なく自社の基準をクリアしている同性カップルであればOKで、渋谷区の証明書は使わないとしています(証明があっても、事実婚への対応との整合性などから、同居年数など自社の基準に満たない場合は断る場合があるのかもしれません)。

 各社の同性カップルや公的証明書等への視点は、比較するとおもしろいですね。社によってはブログ等で直接、経営者が導入への思いを述べており、これも参考になります。

同性カップルも保険商品の選択者になる

 ところで、郵便局で扱うかんぽ生命(もとの簡易生命保険)には2親等規定がなく、じつは以前から同性パートナーを受取人に指定できました。保険金の上限が1000万円で比較的低額だからとか、保険会社の保険にかかわる商法の保険規定部分(現在の保険法)と簡易生命保険法(現在廃止)とで規定が異なったのが残ったためなどと言われています。

 私自身、行政書士やFPとして、同性パートナーを受取人にできる保険がないという訴えにたいしては、かんぽ生命は指定が可能、他の保険でも遺言で受取人を変更できる余地はある(受け取りは本人死亡時ですから遺言の作成も要検討)、と説明してきました。これからはライフネットや、場合によってはニッセイやアスモを検討に加えることもできるようになるでしょう。

 とはいえ、子どももなく、パートナーも共稼ぎで独自の収入があり、自分がいま亡くなってもだれも生活に困らないなら、あえて保険料を払って保険に入る必要があるのか、その分のお金は別に活用したほうがいいのではないか、ともアドバイスすると思いますが……。

 かんぽ生命を含めて4社。これに他社がどう続くのか続かないのか。

 国内市場の先細りに悩む保険業界に、同性カップルは手付かずの新大陸なのか否か……。

 同時に現在4社ではあれ、同性カップルにも選択する余地が生まれました。おなじ保険金に対して支払う保険料は? 付随するサービスは? さらには集めた保険料をその会社がどう投資・運用しているのか(社会的公正の観点など)?

 保険加入の要不要はおいて、選択できる立場になることは一歩前進かな、と思っています。

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

レズビアンカップルの観光客

カイカタ

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つい最近ですが、皇居を訪ねるツアーにアメリカのレズビアンカップルが参加して日本人のガイドに、パートナーは妻であると告げて驚かせていました。今後、このようなケースが増えて、社会が慣れていくでしょう。

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