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茂木健一郎のILOVE脳

yomiDr.記事アーカイブ

日米共通、多くの人と「連帯」できる場所

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 さてさて、人間というのは、一人では生きていけない。

 他人との「連帯感」が必要であります。

 それでは、ここで問題です。多くの人との「連帯感」を実感するのに、いちばん適した場所はどこでしょうか?


 そうです、答えはズバリ、野球場!


 日本のプロ野球で言えば、私は、子どもの頃からの巨人ファン。

 アンチ・巨人のみなさん、すみません。


 だって、ぼくが小学校の頃、巨人はV9(9年連続日本一)だったのですから。

 川上哲治監督の下、王貞治、長嶋茂雄の両スターを始めとするキラ星のような選手たちがいて、それはそれは、輝いていたのです。


 自分でも草野球をしていましたが、よく、王選手の「一本足打法」のマネをして、「あのブランコを越えたらホームラン!」などと言っていたものです。


 そして、プロ野球を見に行くのも、大好きでした。

 東京ドームの前身の、後楽園球場。

 大観衆と一緒になって、贔屓ひいきのチーム(つまり、巨人!)の応援をしていたのです。


 野球観戦ほど、他人との一体感を実感できる場所は、それほどありません。

 一つのヒット、進塁に湧く。ましてや、ホームランが出たら、熱狂の渦です!

 一方、打たれたり、得点を重ねられたりしたら、それこそ意気消沈。

 自分だけでなく、何万もの観衆が一緒になって喜怒哀楽の波にひたるって、考えてみたら、すごくはないですか?


 そして、このような「野球観戦」=「一体感」の方程式は、洋の東西を問いません!


球場まで歩いていく

 というわけで、学会でのシカゴ滞在の間、行ってまいりましたよ! 大リーグ観戦!

 しかも、ワールドシリーズへの出場チームを決める、ポストシーズンの重要なゲーム!


 地元、シカゴのシカゴ・カブスの挑戦!

 そして、相手は、名門、ニューヨーク・メッツ!


 この試合が、私の滞在中、しかも、私の誕生日である10月20日に開催されることを知った私は、得意の検索能力を駆使し(笑)、チケットが販売(というか転売)されている某大手サイトを見つけました。


 

 アメリカの法律では(少なくとも、シカゴのある、イリノイ州の法律では)、しばらく前から、チケットの転売は一定の条件の下で合法になったようで、転売されたチケット自体も有効なようです。


写真1
写真2

 転売だけに、お値段はやや高かったのですが(笑)、ここは誕生日、えいやっ! と注文しました。


 

 さてさて、当日、私は、思い切って、滞在中のシカゴ中心街のホテルから、球場まで歩いていくことにしました。

 スマホの地図の予想だと、所要時間は1時間55分!(写真1

 おいおい、遠すぎだよと、私の知り合いのアメリカ人の友人も言いましたが、いや、やっぱり身体を鍛えなければ! それに、シカゴを歩いて観光するいいチャンスだし、と思って、意気揚々と歩き始めました。


 経済発展で、街並みがずいぶんきれいになったというシカゴ。

 確かに、危険を感じるようなエリアもなく、野球場への道のりを進みます。


 

 途中、2016年のアメリカ大統領選挙、共和党の候補者指名レースに出ていることでも話題の不動産王、ドナルド・トランプ氏の巨大なビルが!

 おもわず、「トランプ風」の表情で自撮りしてみましたが(写真2)、いかがでしょうか。


写真3
写真4

 さらに歩くと、落ち着いたたたずまいの池(写真3)がある公園が。

 公園のまわりには、良い環境を求めてか、高級感の漂う高層住宅が立ち並んでいます。


 そうこうしているうちに、日も暮れてきて、野球場が近づいてきました。


 チケットは、野球場の近くのエージェントの事務所で受け取れ、という指示が。私が行くと、すでに何人か並んでいます。順番が来て、名前を言うと、無事、チケットゲット!(写真4


写真5

勝っても負けても、最高の誕生日

 さあ、いよいよ観戦です!。


 地元だけに、ほとんどが、シカゴ・カブスのファン。しかも、重要なポストシーズンのゲームだけに、みな、ユニホームを着て気合が入っています(笑)(写真5)。


 私の席は、内野の1塁側。プレーが良く見えて、最高でした!(写真6)。


 大リーグ観戦と言えば、欠かせないのがビール!

 「カブス」のロゴが入ったコップもまた、気分を盛り上げます(写真7)。


 さらに、大リーグ観戦と言えば、ホットドッグ!(写真8)。

 マスタードとケチャップをたっぷりかけて頬張ると、もう最高!

写真6
 
写真7
 
写真8

 さてさて、試合の方は、カブスがメッツに攻撃され、メッツのピッチャーの好投もあって、負けました。

 かなり、一方的に負けました。


 スコアは・・・思い出したくありません(笑)。


 しかし、一体感、良かったですねえ。となりのアメリカ人とはかなり仲良くなって、いろいろ話しました。カブスの数少ない見せ場、たとえば、ホームランが出た時には、周囲の人たちと、手を合わせる「ハイ・ファイヴ」(ハイタッチ)、やりました。


 しかし、負けました。


 カブスファンの悔しい思いが天に通じたのか、試合終了と同時に、かなり強い雨が。(そんなの、天に通じなくていいよ、って感じですが!)


写真9

 シカゴ名物、高架鉄道の下を、がっかりして肩を落とす他のファンたちと一緒に、あまりに混みすぎて改札に入れない最寄りの駅を避けて、となりの駅まで、とぼとぼと歩きました(写真9)。


 高架といっても、すかすかなので、雨が上からザーザー降ってきます。

 サイテーでした。みじめでした。

 でも、その、サイテーでみじめな気持ちを、他のアメリカ人たちと共有できて、その連帯感、最高でした。


 いやあ、野球っていいですねえ。勝っても、負けても。

 サイテーの、いや、最高の誕生日でした!

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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