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最新医療~夕刊からだ面より

医療・健康・介護のニュース・解説

歯の知覚過敏…生活習慣でも象牙質露出

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 冷たい飲食物などの刺激で、歯がしみたり、痛んだりする知覚過敏(象牙質知覚過敏症)は、運動や食事の誤った習慣で起きることがある。歯科医院では、痛みを抑える治療だけでなく、予防のための生活習慣も身につけたい。

 健康な歯は、外側から、硬いエナメル質、黄色い象牙質、神経や血管が通る歯髄の3層構造になっている。根元の部分にはエナメル質はないが、歯肉で保護されている。

 知覚過敏は、歯肉が下がったり、エナメル質が溶けたりすり減ったりして、象牙質が外部に露出することから始まる。

 象牙質の表面には、歯髄につながる細い管の穴がいくつもあいている。露出によって、飲食物や風、歯ブラシの刺激が、その管を通って入り込み、奥の神経が興奮し「ピリピリ」「ズキン」といった一過性の鋭い痛みが起こる。

 治療に使う抑制剤は〈1〉神経を鈍らせる〈2〉刺激が通る細い管の中を固める〈3〉細い管にふたをする――のいずれかの作用で、痛みを遮断する。

 抑制剤を適切に使えば、素早く痛みは止まるが、なぜ痛みが起きたかを理解して生活習慣を見直さないと、再発する恐れがある。

 歯肉が下がるのは、歯周病や過度の歯磨きが原因となる。エナメル質のすり減りは、スポーツやストレスなどによる強いかみしめで起こる。

 黒酢や炭酸飲料、かんきつ類といった酸性の飲食物の摂取にも注意したい。酸はエナメル質を溶かす。

 むし歯の治療が引き金になるケースもある。むし歯を削った後に金属のかぶせ方や白い樹脂のつめ方が不適切だと、外部の刺激の影響を受けてしまう。

 細菌の塊・歯垢しこうも悪化の一因となる。

 複数の原因が重なる患者も少なくない。愛知県の主婦(77)は2011年秋、愛知学院大学歯学部付属病院(名古屋市)に駆け込んだ。近所で治療をした奥歯が、食事の際に涙が出るほど痛むようになったからだ。

 同病院特殊診療科教授の冨士谷盛興さんが診察すると、歯肉が下がり、歯垢がたまっていた。奥歯ばかり気になっていたものの、ほかの歯にも知覚過敏の症状があった。

 主婦は、奥歯の再治療とともに、口の中の掃除、生活指導も受けた。

 歯磨きのコツを学び、酸の強い飲食物を摂取した後はすぐ、水をふくむか、うがいを心がけた。口の中を中性にすると、溶けた歯を元に戻す再石灰化という働きが促される。

 今は、2か月に1回、歯科に通い、磨き残しがないかを確かめ、専門的な器具で歯の汚れを落としてもらっている。「痛みがなく、何でもおいしく味わえるのは、歯が健康だからですね」と笑顔で話す。

 知覚過敏を訴える人は増えている。高齢化に加え、酢を飲んだり、スポーツ飲料を飲みながら走ったりする習慣も広がっている。

 冨士谷さんは、「一時しのぎの対応ではなく、知覚過敏の原因を説明し、再発予防の指導や歯の良い手入れができる歯科医院を受診してほしい」と助言する。
(中島久美子)

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