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最新医療~夕刊からだ面より

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乳がんのリンパ節手術…条件満たせば切除省略も

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 乳がんの治療で行う、わきの下のリンパ節切除(郭清)手術が変わりつつある。腕のむくみなどの後遺症が出ることがあるためだ。米国の治療指針では、最初にがんが流れる「センチネルリンパ節」に転移があっても、一定の条件を満たしていれば切除手術を省くよう推奨しており、今後の日本の治療にも影響を与えそうだ。

転移の有無

 乳がんは、最初にわきの下のリンパ節に転移することが多い。かつては、大半の患者でリンパ節を広く切除する「郭清手術」が行われていた。

 リンパ節を切除すると、手術後に腕のむくみや、わきの下の皮膚の感覚障害などが起きることがある。手術を受けた側の腕を使い続けると腕がだるくなる、しびれた感じがする、手に力が入りづらいなど、後遺症に悩まされるケースも少なくない。

 そこで、なるべくリンパ節を温存する治療が普及しつつある。

 まず、超音波やMRI(磁気共鳴画像装置)などの検査で、転移がないかどうかを調べる。明らかな転移が見つからなければ、最初にがん細胞が到達する「センチネルリンパ節」(2~3個)だけを取り出し、転移の有無を調べる。

 日本乳がん学会の診療指針は、センチネルリンパ節への転移が2ミリ以下の微少なものなら、リンパ節切除の省略を勧めている。

生存率に差なく

 さらに欧米では、2ミリ超の転移があっても、「乳がんのしこりの大きさが5センチ未満」「乳房温存手術後に放射線治療と薬物治療を行う」という条件を満たした場合は、切除を省略するのが標準となりつつある。

 2011年に発表された米国の研究では、乳房温存手術を受け、2ミリ超のリンパ節転移が1~2個ある891人について、リンパ節を切除した群と、しなかった群に分けて比較したところ、5年後の生存率には差がなかった。患者の大多数が放射線や抗がん剤、ホルモン剤での治療を受けており、リンパ節に転移があっても、治療で進行を抑え込めたとみられている。

 他にも同様の研究が発表され、今年、国際的な治療の指標とされる「米国総合がんネットワーク」の治療指針が、2ミリ超の転移が1~2個ある場合、リンパ節の切除について「省略を考慮してもよい」から、「省略するよう推奨」に変更された。

ばらつく対応

 一方、国内では世界の最新研究や指針に沿った治療を行う医療機関もあるが、対応にはばらつきがある。

 杏林大教授の井本滋さんは昨年、センチネルリンパ節生検を行う293医療機関の治療方針を調査。日本乳癌学会の指針で、切除の省略を推奨している2ミリ以下の微小転移の場合でも、22%の医療機関が「全例で切除」としていた。2ミリ超の転移が2個以下のケースについては、「全例でリンパ節切除」が63%と主流で、「全例で切除を省略する」とした医療機関は8%にとどまった。

 大阪府立急性期・総合医療センター乳腺外科主任部長の元村和由さんは「一部の患者さんには、不必要なのにリンパ節切除が行われていると言わざるを得ない現状がある。事前に主治医に方針を尋ねた上で、治療を決めるのが望ましい」と話す。
(佐々木栄)

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