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発達障害を持つ漫画家、沖田×華(ばっか)さん(1)看護師修業、コミュニケーションや数字で苦労して

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 発達障害で苦労した体験などをユーモアたっぷりに描いた作品が人気の漫画家、沖田×華(ばっか)さん(36)が今年、最新作「透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記」を出版し、反響を呼んでいる。作品や自身の障害のことなどについて話を聞いた。(利根川昌紀)

沖田×華(おきた・ばっか)さん

 1979年、富山県生まれ。高校卒業後、看護学校を経て看護師に。その後、漫画家に転身。2008年、初の単行本『こんなアホでも幸せになりたい』(マガジン・マガジン)を出版。発達障害の患者でもあり、自分の病気のことなどを書いた作品を次々に発表。今年5月、『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』(講談社)を出版。今月、第2巻が発売された。



 ――「透明なゆりかご」は、どのような作品ですか?

 「高校時代、看護師の見習いとして産婦人科医院でアルバイトをしていた体験をもとに描きました。当時、看護師を目指しており、母親がパート募集のチラシを見つけて応募しました」

 「産院では、人工妊娠中絶の胎児を容器に入れ、業者に渡す仕事を任されていました。指の先ほどの大きさの胎児は、太陽のようなとてもきれいな色をしていました。まさに『命そのもの』で、今まで生きていたのかと思うと、とても不思議な気持ちになりました。一方、産院では日々、新しい命も誕生していました。この作品を通じて、妊娠するとはどのようなことなのか、その意味について考えていただけたら、と思います」


 ――今月、第2巻が発売されました。どのような内容ですか。

 「分娩ぶんべん中に起きた死亡事故、不妊治療の末に妊娠した女性などのエピソードを紹介しています。14歳の妊婦も登場します」


 ――看護師は、どうして志望されたのですか。

 「母親に『安定した職業なので看護師になりなさい』と言われていました。母親は、看護師の資格を持っていれば職を失うことはないだろうと考えたのだと思います。子どもの頃から親には怒られてばかりだったので、親の期待に応えたいという思いもありました」

 「高校卒業後、看護学校に入りました。でも、自分に発達障害があることもあって、足し算や分数など、数字にかかわることがとても苦手です。看護学校の受験も1度、失敗しました。高校は看護系のコースで、卒業間際に准看護師の資格を取っていました。小児科の診療所で働きながら勉強を続け、1年後、ようやく看護学校に入りました」


 ――発達障害とは?どのような状況だったのですか。

 「私は、アスペルガー症候群や学習障害、注意欠陥・多動性障害をもっています。いずれも小中学生の頃には診断がついていたのですが、自分自身は大人になるまで、ピンときていませんでした」

 「とにかく、人とコミュニケーションを取るのが苦手です。その一方で、物事に対して強いこだわりを持っています。小学生の時は学校帰りに寄り道するポイントを決めていて、毎日、それに従って帰らないと気が済みませんでした。友達と一緒に帰ろうと誘われても、その“決まり事”を守らなければならないため、結局、一緒に帰ってくれる友達はいなくなりました。強いこだわりは今でもあります。所持品の色はサファイアブルーでないとダメで、職場のカーテンやゴミ箱などは、すべてこの色で統一しています」

 「学習障害のため、読み書きも苦手です。例えば、漢字の場合、3本ある線が2本に見えてしまったり、2本のものが3本に見えたりします。「シ」「ツ」「ン」も書けません。自分では、正しく書けているつもりなのですが……。算数が苦手なのもこのせいです」

続く

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