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最新医療~夕刊からだ面より

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死滅がん細胞による腫瘍崩壊症候群…化学療法前の予防重要

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 抗がん剤などの化学療法や放射線治療で死滅したがん細胞は、その後どうなるのだろう。バラバラに崩壊した細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)や化学物質は血液中に広がり、通常は尿から排出される。だが、その残骸によって腎臓障害や不整脈が起こり、死に至ることもある。「腫瘍崩壊症候群」と呼ばれ、化学療法などを受ける患者は注意が必要だ。

 細胞の中には、遺伝情報を伝えるDNAやリン、カリウムなどの化学物質が含まれている。がん細胞も同様で、抗がん剤などで死滅・崩壊すると、これらの物質が血液中に大量に放出される。正常な細胞より増殖が速いがん細胞にはリン、カリウムも多い。

 腎臓機能が低下した患者では、がんが急速に崩壊すると尿からの排せつが不十分で血液中に様々な物質が蓄積する。DNAが尿酸に変化して起きる高尿酸血症、リンの蓄積による高リン血症、カリウムの蓄積で起きる高カリウム血症などが原因で、急性腎不全や不整脈が引き起こされる。吐き気、昏睡こんすい、けいれんなどの症状が出ることもある。これが腫瘍崩壊症候群だ。

 特に問題となるのは急性白血病、悪性リンパ腫などの血液がんだ。山梨大(山梨県中央市)血液・腫瘍内科教授の桐戸敬太さんは「がん細胞の増殖が速い血液がんは化学療法が効きやすい。その分、腫瘍も壊れやすく、腫瘍崩壊症候群の予防が重要」と説明する。

 病状が進んだ患者ほど、同症候群の危険性が高くなる傾向がある。小児の急性リンパ性白血病では63%で同症候群が起きたという報告もある。

 予防は、化学療法の前に生理食塩水などを点滴して体内の水分を増やし、尿からの排せつを促すのが基本だ。同症候群の危険性が高い場合は、高尿酸血症や高リン血症などを防ぐ薬を投与する。

 進歩したのが、同症候群による高尿酸血症を防ぐ方法だ。現在は3種類の薬が使われる。足の指などに激痛が走る痛風の治療薬としても使われる内服薬「アロプリノール」(一般名)と「フェブキソスタット」(同)は、化学療法の24~48時間前に使い始める。一方、化学療法の4時間前に始めれば尿酸値を下げる効果がある点滴薬の「ラスブリカーゼ」(同)もある。

 ラスブリカーゼは、同症候群の予防が十分でなく、高尿酸血症になった場合には最大7日間投与する。国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市)

 ただし、吐き気や肝機能異常などの副作用がある。繰り返し使うと薬の成分に対する免疫反応から、重いアレルギーを起こす場合もある。最初の投与期間が終わった後、再び使うことは勧められない。

 最近は、がん増殖を抑える分子標的薬の登場など化学療法が進歩し、がんをたたく効果が高くなった。その分、同症候群も起こりやすい。

 桐戸さんは「これまで腫瘍崩壊症候群についてあまり心配していなかった肺がんや大腸がんなどでも、予防や治療の必要性について考えていくべきだ」と話している。(石塚人生)

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