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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(13) 持ち家でも保護は可能、車は状況しだい

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住宅ローンがあるとき

 住宅ローンが残っている場合は、保護費の一部が資産形成にあてられることになるため、原則として、そのままの保護は認められません。ただし返済総額が少なく、短期間で終わるときは、ローンが残っていても保護を認められます。東京都の場合は、残額300万円以下、毎月の返済が生活扶助基準の15%以下、5年以内を目安としています。金融機関の了解を得てローンの返済を繰り延べしてもらっているときも、そのまま保護が認められることがあります。

 すでに住宅ローンの返済が滞り、いずれ担保権が実行されるときは、資産形成にならないので、保護を受けるのに支障はありません。あとから債務を整理します。家を失って別の住まいへ転居するのに必要な費用は、生活保護から出ます。

高齢者はリバースモーゲージが優先

 居住用不動産の持ち主が65歳以上(配偶者がいるときは配偶者も65歳以上)のときは、生活保護より先に「リバースモーゲージ制度」(要保護世帯向け長期生活支援資金貸付制度)を利用することを、2007年度から求められるようになりました。

 持ち家を担保に、各都道府県の社会福祉協議会が毎月一定額を貸し付け、持ち主が亡くなったら相続人による売却か担保権の実行によって回収するしくみです。つまりは不動産を担保にした生活費ローンです。実勢評価が500万円以上で、抵当権などの設定がない物件が対象で、毎月、保護基準額の1.5倍を貸します(収入があれば減額)。貸し付けの限度額は評価額の7割、マンションは5割。それを超えたら処分して生活保護に移行します。利率は長期プライムレート(現在は年利1%余り)で上限3%。リバースモーゲージには民間金融機関の商品や、社協が扱う高齢者世帯向けのものもありますが、要保護世帯向けは、比較的小さな物件も対象になる点と、連帯保証人が要らない点が特徴です(相続人になる見込みの人の同意は得てから契約する)。

 生活保護を受けながら保有していた資産を子どもなどが相続するのは筋が通らないという考え方と、高齢者の生活保護が増えるのを抑えるという目的で、作られた制度です。申し込んでから貸し付けが実行されるまでは、生活保護を利用できます。

自動車の所有が認められる場合

 クルマは、ぜいたく品でしょうか? 自動車を保有する世帯は80.1%に達しています(2015年3月末の内閣府「消費動向調査」)。

 しかし厚労省は、「単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率のいかんにかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っていない」という見解です。

 ただし、保有が認められる場合があり、しだいに拡大されてきました。現在、以下のようなケースでは自動車の保有が認められます。家族を乗せる場合、家族が運転する場合も含まれます。

1 事業に用いる場合(農業、各種の商売、運送業、個人タクシーなど)

2 通勤に必要な場合(障害者、公共交通機関の利用が著しく困難な地域、または深夜勤務)

3 障害者・障害児の定期的な通院・通所・通学に必要な場合(身体障害に限らない)

4 公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、定期的な通院・通所・通学に用いる場合

5 失業や病気、けがで就労を中断しているが、6か月以内に就労による保護脱却が見込める場合
 (6か月を過ぎて保護継続中でも、就労に向けた具体的活動をしていれば約1年以内まで認める)

6 公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、求職活動に必要な場合

7 保育所などへの子どもの送り迎えに必要な場合

 障害者の通勤を除いて、車の処分価値が小さく、他の手段では移動が難しいこと、維持費をまかなえることなどが条件です。これら以外でも、特別な事情があれば検討対象になりますが、認められないときは、処分価値のない古い自動車でも売却を求められるのが現状です。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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