文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(12) 丸裸になってからの保護でよいのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

保護費のやりくりで貯蓄するのは問題ない

 保護を受けてから、保護費をやりくりして貯蓄するのは、認められるのでしょうか。

 保護費の使い道は基本的に自由です。生活の維持向上や自立に向けた貯蓄は問題ありません。

 かつては、保護費を切りつめた貯蓄でも、資産と解釈して高額なら収入認定するという運用があったのですが、加藤訴訟秋田地裁判決(1993年4月23日、高齢の障害者が将来の介護費用として約80万円をためていた)、中嶋訴訟最高裁判決(2004年3月16日、子どもの高校進学のため満期保険金50万円の学資保険に加入していた)――を経て、運用が変わりました。

 中嶋訴訟で最高裁は「生活保護法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は,収入認定の対象とすべき資産には当たらない」と判断したのです。

 この裁判の影響もあって、高校・高専レベルの学校の就学費用は、2005年度から生業扶助として生活保護から出るようになりました。

 しかし、子どもの塾代や大学の進学費用は出ません。家財道具や電化製品の修理・買い替え費用、結婚費用も出ないのが現状です。あまりにも切りつめた生活をするのは問題ですが、やりくりによる貯蓄を認めるのは当然でしょう。

 なお、住宅が傷んだときの修理費、資格や技能の習得費、就労活動費、就職支度費、出産費、葬祭費は、一定の範囲で生活保護から支給されます。

生命保険、学資保険の扱い

 保護を申請したときに、解約返戻金のある生命保険に加入していると、資産として解約を求められるのが原則です。ただし返戻金が少額で、保険料も高くないときは、保険金や返戻金を受け取ったときに保護費を返還するという条件つきで、保護を受ける方法が認められています。目安としては、返戻金の額が、医療扶助を除いた保護基準額の3か月分程度、保険料が、医療扶助を除いた保護基準額の1割程度以下とされています。

 このほか、厚労省の見解は示されていないのですが、近いうちに亡くなるか重い障害になる病人がいて、やがて保険金が出る見込みのとき、入院特約があって入院の見込みがあるとき、年金特約があって年金給付が近く始まるときなどは、加入の継続を認めるべきではないでしょうか。福祉事務所が認めない場合は、法律家に相談して交渉してみるとよいでしょう。

 学資保険は、保護を申請する時点で加入している場合、解約返戻金が50万円以下なら、保有したたま保護を開始してよいという解釈を厚労省は示しています。先に述べた中嶋訴訟の事例にぴったり合わせた金額です。

 ただし保護を受けてから加入した場合と違い、満期でお金を受け取ったら原則として、申請時の解約返戻金に相当する額を返還するよう求められます。学費がどんどん高くなった中、大学などに進学するために入った学資保険でも、もともと保有していた分を没収されるとしたら、自立を助長するという生活保護の目的に反する気がするのですが、どうでしょうか。

3 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

原記者の「医療・福祉のツボ」の一覧を見る

最新記事