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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(12) 丸裸になってからの保護でよいのか

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保護開始時の手持ち金は、保護基準の半月分だけ

 申請する段階で持っていた手持ち金のうち、保護基準額の5割を超えている分は、あとから保護費の減額という形で“没収”されることになります。

 結局、保護を受ける時に保有が認められるのは、保護基準額の0.5か月分にとどまります。保護基準額は、地域、年齢、障害の有無、医療費の額などによって違ってきますが、0.5か月分は単身の場合だと5万~8万円程度でしょう。

 それを考えると、手持ち金が保護基準額の半分に減るまでは、家財道具や電化製品で足りない物を買ったり、買い替え・修理したりしておくほうが得策です。家財道具や電化製品の購入費用は、本当に最低限の物がないときや、新しい住居に住むときに一定額が出るのを除いて、生活保護で支給されないからです。いろいろな物が壊れたり傷んだりしても、修理や買い替えの費用の別途支給はなく、保護費の中からをやりくりするしかありません。実際に生活に困っている人は、そんなことを考える余裕のない場合が大半でしょうが……。

生活再建をかえって妨げないか

 手持ち金の実務上の線引きに対しては、ほとんど丸裸にならないと保護を受けられず、厳しすぎるという意見があります。保護を受けていない段階では、公的な保険料や医療費、水道代などの負担がかかります。生活費以外のお金が乏しいと、就職活動のための交通費や衣服代を出せない、医療にかかりにくいといった状況が続き、生活力が弱って精神的も追い込まれがちです。弱ってから保護するのでは、生活再建がむずかしくなるのではないか、ということです。

 保護を受け始めてからも、手持ち金が乏しいと、生活の向上や自立に向けた活動の余裕がなく、かえって保護からの脱却を妨げるのではないか、という指摘があります。

 2004年12月に出された「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」は、破産法の規定を参考に、手持ち金の保有限度額を3か月程度まで認めるべきだという多数意見を示しました。しかし、一般世帯とのバランス、国民感情、財政負担などを理由に反対する意見もあったことから、厚労省は保有限度額を拡大していません(むしろ反対に、保護基準を下げています)。

 他の先進国の公的扶助制度では、これほど厳しい資産基準は設定されていないようです。手持ち金がほぼ完全になくなってから保護するという考え方は、見直すべきだと筆者は思います。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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