オトコのコト 医師・小堀善友ブログ
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イタチの精子、20年の凍結を経て人工授精成功
私が現在、住んでいるシカゴに、リンカーンパークという広大な公園があります。ダウンタウンの北東のミシガン湖沿いにあります。湖といっても、面積は関東地方全ての県を足した面積よりも大きく、湖畔には砂浜もあり、まるで海のようです。
パーク内には動物園、植物園、博物館、アーチェリー場、野球場、サッカー場、ゴルフコース、ビーチが4か所、ヨットハーバー、テニスコート、サイクリングコース、スケート場など様々な施設があり、シカゴ市民の憩いの場所となっています。
植物園と動物園の入場料は無料です。私も、家族と散歩がてらに行ったことがあります(しかし、駐車場は有料です)。
結構立派な動物園で、ライオン等様々な動物が展示されています。つくづく思うのは、アメリカは様々な施設を非常に奇麗に保存管理していることです。つまり、施設管理に巨額なお金がかかっているということだと思います。
先日、そのリンカーンパーク発の興味深いニュースがありました。
イタチの一種・クロアシイタチ(black-footed ferret)の長期間凍結された精子を用いた人工授精で、子どもが生まれたというのです。
クロアシイタチは、米国やカナダに生息していますが、1967年より絶滅危惧種に指定されています。使われた精子は、「スカーフェイス」という名前のイタチでした。彼は、1980年代の野生最後18匹のクロアシイタチの生き残りの1匹です。なんと、20年もの間凍結保存されていたこととなります。このスカーフェイスの精子を用いて、8匹の子どもを得ることができました。
この研究は、長期間凍結保存した精子を用いることが有効だと示すだけでなく、絶滅危機種の遺伝的多様性に貢献することができることを示しました。少数しか生き残りのいない動物にとって、その種を保存していくためには、遺伝的多様性は非常に重要なことです。
私は専門外であり、一言で説明するのは非常に難しいのですが、人間を含めた地球上の生物が生き残っていくためには、生物多様性(種、個体、生態系)が非常に重要です。たとえば、畑で育てられる植物は遺伝的に均質であるので、病害虫や環境の変化があった場合に壊滅的ダメージを受ける可能性がありますが、野生の植物はそういうことはありません。それは、野生種は遺伝的多様性が豊かで個体ごとに遺伝形質が異なり、その多様な形質のあるものは環境の激変や未知の感染症に耐えうる形質をもっているからなのです。
リンカーンパークでは、当初、パートナーのいないメスのクロアシイタチに現在生きているオスの精子を使用していたのですが、精子に限りもあり、遺伝的多様性の問題や精子の質の悪化により、回を重ねるごとに妊娠率が低下してきました。そのため、リンカーンパークの科学者たちは凍結された精子の使用に踏み切ったのです。そして、見事に成功しました、この科学者たちは、「絶滅危惧種の精子や他の生体物質を凍結保存することは遺伝的多様性の保存、そして将来の動物保護に重要である」と言っています。
しかし、自分の体が亡くなって20年も
泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病 [ 小堀善友 ] |
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