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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(11) 働いていても、年金があっても、保護を利用できる

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 生活保護について、働けない人や収入ゼロの世帯だけを対象にした制度というイメージを抱いている人もいますが、大きな誤解です。

 簡単に言うと、生活保護は「足らずを補う」しくみだということです。

 いろいろな社会制度による給付や、親族からの援助があっても、手持ちの預貯金を使っても、勤労による収入を得ていても、それらを全部加えた金額が、健康で文化的な最低限度の生活を営むのに必要な金額(その世帯の生活保護基準の月額)に足りなければ、足りない分だけ、生活保護費の支給を受けることができます。必要な金額には、医療費や介護費も含まれます。

 働いていて収入があっても、年金や児童手当などの収入があっても、それらの金額が十分でなければ、生活保護を利用できるのです。

足らずを補う

 簡単な具体例で説明しましょう。足し算と引き算なので、それほど複雑ではありません。

 たとえば、単身の人で、かりに、生活保護の基準が生活扶助8万円、住宅扶助(家賃)4万円だとすると、保護基準額は月12万円です。それに対して年金収入が6万円あるだけなら、差額の6万円の保護費が福祉事務所から支給されます。

 同じ人に勤労収入があるときは、働くための必要経費として、収入額に応じてある程度の額が勤労控除され、それを除いた額が勤労収入として認定されます。5万円のアルバイト収入なら1万円余りが勤労控除され、勤労収入の認定は4万円足らず。年金と合わせた収入認定額は10万円足らずなので、2万円余りの保護費を受け取れます。これは保護の要否を判定するときの計算方法で、保護が開始された後は、勤労控除が2万円近くに増え、支給される保護費も増えます。

 この場合、医療費にあてることのできる収入はないので、医療を受けたときの費用は全額、福祉事務所から医療機関に支払われ、本人の負担はありません。

 低年金の世帯でも、働いていて収入が少ないワーキングプアの世帯でも、生活保護の対象になりうるわけです。実際、働きながら保護を受けている世帯はけっこうあります。フルタイムで働いていても、家族が多かったり医療費がかさんだりするときは保護を受けられることがあるのです。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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