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動き出す予防医療

からだコラム

[動き出す予防医療]生まれた時から 「病気のタネ」

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 病院で勤務していると、多くの死に直面します。私は基礎研究のかたわら、医師として約10年間、時間の一部を診療に当てる機会がありました。この間に亡くなられた患者さんの中には天寿を全うした方がいる一方、残念ながら、明らかに健康への配慮が足りなかったために天寿を全うできなかった方もいらっしゃいました。

 読者の皆さんの中には、自分は健康だから予防医療なんて関係ないと考える方もいらっしゃるでしょう。ところが、一度、遺伝情報の科学に足を踏み入れてみると、すぐに「正常」とは定義しがたいものであることに気づきます。つまり、完璧な遺伝情報を持っているひとは存在しません。誰しも、何らかの疾患感受性因子をいくつか持っています。別の言い方をすれば、私たちは誰でも生まれた時から病気のタネを抱えているのです。ですから、予防医療は病気のタネを抱えた現在の私たちのために必要なのです。

 これまで、いかにして疾患を治療するかが医療の中心課題でした。しかし、遺伝情報に基づく新たな予防医療の出現を契機に、医療全体が病気にならないための取り組みへと大きく変遷していくでしょう。予防医療の主役は、医療関係者ではなく、読者の皆さんです。ぜひ予防医療を自分自身のための医療としてとらえ、長く健康を享受するために、まずは予防医療に関する知識を取り入れていただきたいと思います。そして、時折、基礎研究にも目を向ければ、基礎研究が着実に医療を変革し、私たちの日常生活に到達していることを実感できるでしょう。読者の皆さんが予防医療に関心を持ち、これまで21回のコラムを読んでいただいたことに深く感謝し、連載を終わりに致します。(林崎良英・理化学研究所プログラムディレクター)(おわり)

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