文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

教えて!yomiDr.

ニュース・解説

性暴力被害者への支援センター…医療機関と連携 心身ケア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 性暴力に遭った被害者に心と体のケアを提供する「ワンストップ支援センター」の設立が全国で進んでいる。

 20か所超の都道府県で支援体制ができたが、相談や付き添いをする支援員や、協力医療機関の確保は容易ではない。設立が難航している地域もあるなど、課題は多い。

 性暴力には、強姦ごうかんや強制わいせつ、DV(配偶者や恋人からの暴力)、子どもへの性虐待などがある。被害者が心身に負うダメージは大きいが、身内に打ち明けることさえも難しいのが実情だ。

 内閣府の調査では、異性から無理やり性交された経験のある成人女性のうち、約7割が「誰にも相談しなかった」と回答。警察への相談は4%にとどまる。勇気を出して警察に届け出ても、落ち度を指摘され、「さらに傷ついた」と話す被害者も少なくない。

 ワンストップ支援センターは、被害者の立場に立って相談に乗り、必要に応じて弁護士やカウンセラー、警察などにつなぐ。この際、重要な役目を担うのが医療機関だ。性暴力により女性は妊娠や性感染症の危険にさらされるため、早期に受診する必要がある。緊急避妊には被害後72時間以内にピルを服用しなければならない。警察に訴える場合、証拠となる加害者の遺留物が取れる目安は3日間とされ、採取は医師が行う。

 大阪府のワンストップ支援センター「性暴力救援センター・大阪(SACHICO)」は、2010年に大阪府松原市の阪南中央病院に設立された。24時間体制で被害者に対応し、心と体のケアを提供する。約30人の支援員が電話相談や付き添いを担い、産婦人科医が診察する。昨年度から府との共同事業となり、府内各地に協力病院を増やしている。

 5年間で2万件を超える電話相談があり、983人が来所。夜間や未明など、時間外の来所が6割を占めた。初診は平均約2時間かけており、再診率は8割を超える。代表の産婦人科医、加藤治子さんは「24時間、対応できる医療機関を拠点にすることで、きめ細かなケアができる」と強調する。

 12年に民間団体が設立した「性暴力救援センター・東京(SARC東京)」も江戸川区の病院と連携しながら24時間、対応する。今年度から東京都が人件費などを補助。協力医療機関は都内65か所に広がった。

 名古屋第二赤十字病院(名古屋市)は来年1月、24時間対応のセンターを開設予定。電話相談を受ける支援員を養成しており、今後は病院で対応する専門の看護師を増やす方針だ。

 内閣府は12年、ワンストップ支援センターは都道府県に最低1か所は必要との見解をまとめ、センター設置のための手引を作成した。国のモデル事業を活用して設置を目指す自治体も増え、今年は群馬、栃木、京都などで体制が整った。岐阜と長野も設立を表明している。

 だが、センターによっては拠点病院がなく、被害者への継続した診療が難しかったり、24時間対応ができなかったりするケースも多い。どこまで充実した支援を提供できるかが課題だ。

 病院が支援拠点を引き受けにくい背景には、性暴力の被害者を診察しても、診療報酬で加算されるなどの制度上のメリットがなく、負担が大きいという事情がある。現場からは国に制度の見直しを求める声も上がっている。

 「性犯罪の件数が少ない」(岩手県)、「警察と既存の犯罪被害者支援組織で対応可能」(愛媛県)として、現時点では設置は必要ないとする県もある。今後、地域格差が問題になりそうだ。(佐々木栄)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

教えて!yomiDr.の一覧を見る

最新記事