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子宮頸がんワクチン…重い症状、日本は突出

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 厚生労働省は17日、子宮がんワクチンの接種後に重い症状の報告があった全患者の追跡を行い、未回復の患者が186人いるという調査結果を発表した。世界的に広く接種されているワクチンが、なぜ日本で大きな問題となるのか、早急な原因究明が欠かせない。(医療部・赤津良太、社会部・木下敦子)

 
国による子宮頸がんワクチン接種の積極的な勧めの中断継続決定について「評価できる」と報道陣に語る健康被害者の母親(右奥)

■学校生活に支障

 子宮頸がんワクチンは、2013年4月に予防接種法に基づく国の定期接種に位置づけられたが、その直後から接種後に慢性的な体の痛みを訴える声が相次ぎ、同年6月、「積極的に勧めることを一時中断する」との措置をとった。

 昨年8月、田村前厚労相が接種後に重い症状が出た全患者の実態把握を約束。これを受けて約2600人の追跡調査が行われた。

 経過がわかった1739人の多くは症状が出て7日以内に回復していたが、186人は未回復のままだった。頭痛や体の痛み、けいれんなど症状は多岐にわたり、6割以上が複数の症状を抱えていた。女子中高生が多く、通学に支障が生じるなど、学校生活に大きな影響が出ている。

 同日、開かれた同省の有識者検討会(座長=桃井真里子・国際医療福祉大副学長)の提言を受け、同省は患者の救済に向けた審査を早急に開始すると共に、学習支援など相談体制を拡充する方針を決めた。

 子宮頸がんの予防を訴える産婦人科医らからは、接種の勧奨再開を求める声もあったが、桃井座長は「国民に適切な情報提供を行うには、検討を継続する必要がある」として見送った。

■接種各自が判断

 このワクチンは約120か国で使われているが、接種後の重い症状で国が接種に関する対応を変更したのは、日本だけとされる。世界保健機関(WHO)は、「安全性への懸念は確認できない」として、冷静な対応を求める声明を繰り返し出している。

 海外でも、接種後に同様の体の痛みなどの重い症状が出るという報告はある。だが、日本で「体の広範な痛み」が出る頻度は10万接種当たり1・1件に対し、米国、韓国では0・1件、英国は軽症を入れても0・6件。報告基準が国によって違い、一概に比較できないが、日本の頻度は高い。

 理由として人種差のほか、「社会問題となり、医師が注意深く診るようになったため」という指摘もある。原因についての専門医たちの見解も一致していない。

 厚労省は今後、原因究明に向けた研究や、接種の有無で症状が出る頻度に差が出るかなどの調査を行い、結果を踏まえ、有識者検討会で接種勧奨の再開を議論する予定だ。

 予防接種法に基づくこの定期接種は、国が推奨し、国民には接種の努力義務を課すものだ。子宮頸がんワクチンは今も定期接種に位置づけられ、希望すれば受けられるが、国は積極的に勧めず、判断を国民にゆだねるのは異常な事態だ。国は、国民が納得のいく説明をしなければならない。

子宮頸がんワクチン

2009年12月発売の「サーバリックス」と11年8月発売の「ガーダシル」がある。子宮頸がんの原因の5~7割を占める2種類のウイルスへの感染を予防する効果があるとされる。



国、被害救済の審査着手へ

 予防接種を受けた後の健康被害については国の救済制度があるが、子宮頸がんワクチンを巡っては、患者の追跡調査が終わるまで事実上、審査がストップしていた。今回の調査結果を受け、救済の手続きが進められることになった。

 同ワクチンが国の定期接種になったのは、2013年4月。だが、それ以前から国の補助事業が始まっており、国が広く接種を呼びかけていた。

 補助事業期間中の接種は「任意接種」とされ、被害は独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)が窓口となる。定期接種は市町村を通じて受け付ける。

 審査で「接種と症状の因果関係が否定できない」と判断されれば、両制度とも、医療費の自己負担分や、医療手当(月額3万円余り)が支給される。ただ、定期接種では通院・入院ともに対象、任意接種は入院のみと格差がある。

 どちらの時期も国が関与してきたことから、厚生労働省は今後、同ワクチンでの健康被害については両制度の格差をなくす方針だ。

 定期接種での被害について、国には今年7月末までに15件の救済申請があったが、まだ1件も審査されていない。厚労省は、追跡調査で症状の全体像が明らかになったとして、18日にも認定作業を行う。任意接種についても、申請があった98件中27件しか支給・不支給の判断が行われておらず、早急に作業を進めるとしている。

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