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からだコラム

[動き出す予防医療]世界に誇れる実力・先見力

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 基礎研究から産業や医療への応用までの道程は、あまりにも長いとよく言われます。最近、私はこの距離が少しずつですが、短縮されてきたように感じています。

 1995年、尾身幸次元科学技術担当相らの働きにより施行された科学技術基本法は、科学技術の発展のみならず、基礎科学と社会応用や産業化への距離を縮めるのに大きな役割を果たしました。

 当時、世界はゲノム(全遺伝情報)解析に沸いていました。一方で、「機械的に配列決定するゲノム計画が一体何の役に立つのか?」という強い批判がありました。その年に、私たちのグループは「完全長cDNAプロジェクト」を開始しました。これは、どのゲノム情報がいつどこで働いているのかを網羅的に調べるプロジェクトです。2001年、私たちは、成果をすべて公開しました。これは、世界の研究者から絶賛されました。一方で、一人の行政官が「このデータで、私たちの生活は明日からどう変わるのか?」と尋ねました。私は言葉に詰まりました。

 数年後、京都大学の山中伸弥教授は、私たちのデータベースから主要因子を探し出し、iPS細胞の開発に成功しました。科学の基盤を作るのが使命の私たちにとって、データが役に立ったと聞くほどうれしいことはありません。

 昨年、iPS細胞から作製した細胞を目の難病患者に移植する臨床研究が理化学研究所の高橋政代先生によって行われました。

 私たちのデータが基礎となり、山中先生がノーベル賞の偉大な業績を生み、高橋先生が臨床応用までこぎつけました。世界をリードする基礎から臨床応用までのバトンリレーが日本の国内で繰り広げられました。日本の生命科学の実力と政策の先見力を私は誇りに思います。(林崎良英・理化学研究所プログラムディレクター)

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