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デング熱、媒介する蚊が北上

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流行抑え込みへ取り組み進む…台湾・高雄市ルポ

民家で殺虫剤をまく、高雄市の職員(7月8日、高雄市郊外で)=江村泰山撮影

 温暖化に伴って日本での感染拡大が懸念されるデング熱。毎年のように多数の感染者が出ている台湾南部の高雄市では昨年、感染者が過去最高の約1万5000人に達した。

 流行を抑え込もうと、ウイルスを媒介する蚊の発生源を取り除いたり、住民への情報提供を充実させたりといった取り組みが進んでいる。

■殺虫剤の噴霧

 マスク姿の2人がワゴン車の荷台からホースを延ばし、地面にある雨水升のコンクリートの蓋の穴からノズルを差し込んだ。「デング熱らしい患者が出た」との通報を受け、高雄市が7月8日に行った緊急防除。ノズルで注入された白い液体は、ボウフラの羽化を防ぐ「成長抑制剤」だった。感染が疑われる患者宅の周辺の家には殺虫剤が噴霧された。

 流行が慢性化したのは、1987年に約40年ぶりの大流行が起きてから。過去10年間に500人を超える感染者が出た年が6回あった。今年の感染者はすでに1000人を超えている。

 95年に1%だった市内の下水道の整備率は、2010年に61%に拡大。高雄市衛生局は、下水道に雨水を流す雨水升が、蚊の発生源になっていると見る。

■雨水升が発生源

 雨水升上部の蓋のほとんどは、蓋を引っ張って開ける工具を引っかける穴が開いていたり、格子状だったりする。升で発生した蚊が住宅街に侵入、感染を拡大させているとの見立てだ。

 日本では昨年、海外で感染した人のウイルスが蚊の媒介で広まり、162人が罹患りかんした。69年ぶりの国内感染の舞台になった東京都渋谷区の代々木公園でも雨水升に大量の蚊がいた。

 蚊は植木鉢の受け皿や古タイヤの内側にたまったわずかの水にも卵を産む。高雄市の一部の町内会では、屋外の水が入ったバケツをひっくり返したり、注意点をまとめたビラを配ったりする活動を続けている。

 7月7日に市中心部の二つの町内会が実施した活動には計30人が参加。活動9年目の宋美蓮さん(66)は「煙たがられて爆竹を投げられたこともあるが、今では大切さを理解してもらっている」と話した。市は今年、感染者が出た地域が一目で分かるスマートフォン用アプリを無償配布するサービスも始めた。

■温暖化で活発化

 高雄市の年間平均気温は過去30年間で0・78度上昇。吸血回数が多い「ネッタイシマカ」の活動が活発になり、感染を拡大させている。他の熱帯アジア諸国で流行したウイルスが持ち込まれるケースも目立つ。市衛生局の何啓功局長(55)は「人口密集地には、インドネシアやフィリピン出身の季節労働者や漁船乗組員も多く、さまざまなウイルスが流入する」と説明する。

 2007年まで4年間、市衛生局長を務めた開業医の韓明栄さん(66)は「ネッタイシマカは温暖化で活発化しており、日本にも今後、定着するおそれがある。雨水升の改良など時間のかかる対策を今から進める必要がある」と指摘している。(江村泰山)

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