医療部発
医療・健康・介護のコラム
心臓切断!?でも大丈夫…人体の不思議
医療ルネサンス「不整脈」(全5回、8月26~28日、同31日~9月1日)を担当しました。その4回目で紹介した、都立多摩総合医療センターでの心房細動に対する手術が、ちょっと驚きでした。何と心臓を切断してしまうのです。もちろん真っ二つというわけではなく、一部分ではありますが、本当に切り取ってしまうのです。
心房細動とは、心臓にある四つの部屋のうち、上部の左右にある二つの部屋、心房が細かく震えることです。加齢とともに起きやすく、長く続くと心臓に負担がかかり、心不全の原因になります。また一番怖いのは、心房内で血液がよどんで血栓ができやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を起こす危険があることです。
その血栓ができる主な場所が、実は、盲腸と同様、あってもなくてもいい左心耳という場所なのです。名前の通り、耳のような形をした突起が、左心房におまけのようにくっついています。内部は、左心房につながっている袋状の構造です。紹介した手術では、この左心耳を取ってしまうことで心房細動による脳梗塞を予防するのです。
胸腔鏡を使った手術を見学させてもらいました。胸の脇に空けた小さな穴から、大きなホチキスのような道具を入れて左心耳をはさみ、バチンと一瞬で切断すると同時に縫合も行います。出血もありません。取れた左心耳は、確かに耳のような形、大きさでした。命そのものとも言える心臓の一部が、なくてもいいどころか、心房細動のある患者にとっては非常に危険な場所になってしまっていたとは…。
現在、心房細動による脳梗塞予防には、血栓をできにくくする抗凝固薬の服用が一般的ですが、この左心耳の手術でも同等な効果が期待できるとのこと。この手術が広まれば、一定の副作用は避けられない薬を一生飲み続けるより、思い切って手術を受けて、後は薬なしで過ごしたい、そう考える人も意外に多そうな気がします。
藤田勝 |
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