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気になる社会保障Q&A

医療・健康・介護のニュース・解説

Q 介護休業ってなに

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坂本 知佳
県立高校2年。
共働きの両親と暮らす。数学が得意。

仕事との両立体制整える

  お父さんが、「会社の上司が、お母さんの介護で3か月、休むことになった」って話していたわ。高校の夏休みより長い期間だから、驚いちゃった。

  その上司は、育児・介護休業法が定める「介護休業」を利用するんだよ。仕事と家庭の両立を支援する制度の一つで、雇われて働いている人が、家族の介護のために、まとまった休みを取ることができるんだ。病気やケガなどで2週間以上、常に介護が必要な状態であることが条件だけどね。介護保険制度の要介護認定を受けていなくても利用できる。

  どのくらい休めるのかしら。

  家族1人について、介護が必要な状態になるたびに取ることが出来るんだけど、通算で93日までだよ。一定の要件を満たせば、国が運営する雇用保険から、賃金の40%に相当する額を受け取れる。

  93日っていうと、3か月ね。短い気もするわ。

  介護休業はもともと、介護保険の申請をしたり、入所施設を探したりして、「働く人が、今後の仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間」という位置づけだからね。よく誤解されるけれど、「介護を自分でするため」の休業ではないんだ。本当に介護に専念しようと思ったら、とても3か月では足りないしね。三菱総合研究所が2014年度に実施した調査では、平均的な介護期間は約45か月だった。

  そうなのね。

  一方で、介護では、長期に休む必要はないけれど、通院の付き添いや、ケアマネジャーとの打ち合わせなどで、仕事を休むことがあり得る。こうした時のために、育児・介護休業法は、1日単位で休みを取れる「介護休暇」制度も設けている。介護が必要な家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日、休める。

  それは心強いわ。

  でも、家族の介護・看護を理由に仕事を辞めた人は、年に10万人近くにも上っているんだ。

  介護休業や介護休暇があるのに、なぜ、仕事を辞める人が多いの?

  施設や在宅サービスが不十分で、仕事と介護を両立できる体制を整えきれないという事情が背景にあるんだろうね。制度の利用も低調で、介護休業の利用者は、国の調査では、介護をしている雇用者の3・2%に過ぎない。「職場に迷惑がかかるのでは」「昇進に影響するのでは」と考えて、利用をためらう人が多い、という指摘がある。

  深刻なのね。

  働きながら介護をしている人を年齢別に見ると、重要な役職に就くことが多い40歳代から50歳代の割合が高い。だから、仕事と介護の両立をしやすい環境づくりを進めずに、働き盛りの従業員が介護に行き詰まって辞めたら、勤め先だって痛手のはず。経営に影響を及ぼしかねないね。

  どうすればいいのかしら。

  高齢化の進展で、介護が必要になる人は今後も増えるとみられている。住み慣れた地域での介護を国が推進するうえでも、仕事と介護の両立支援はとても重要なんだ。介護休業や介護休暇などについては、介護を抱える人がより利用しやすくなるよう、見直していく必要がある。一方で、先進的な取り組み例などを通じて、制度を利用しやすい職場作りに努めることも求められているよ。
(石原毅人)

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