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アトピー性皮膚炎治療新指針 治療のポイントは…「三つの柱」と適度な発汗

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 アトピー性皮膚炎の一般医向け診療指針が今年5月、改訂された。どうしたら肌を良い状態に保てるのか。新指針を基に、スキンケアや薬の使い方などのポイントをまとめた。

 かゆみのある湿疹が繰り返しできるアトピー性皮膚炎は、外部の刺激から皮膚を守るバリア機能の低下や、ストレスなどで発症すると考えられている。アレルギー体質の人に多い。

 0歳児から学童期の子どもでは、アトピー性皮膚炎の患者は1割前後に上る。子どもに多い病気で、年とともに減るとされてきたが、厚生労働省研究班が2006~08年度に東京大、近畿大、旭川医大の3大学の職員計約4800人を対象に行った調査では、20歳代が10・2%、30歳代で8・3%と、大人の患者も少なくないことがわかってきた。

 日本アレルギー学会は2006年から、皮膚科専門医だけではなく、身近な一般医向けの診療指針を作成してきた。今年5月、国内外の最新の研究成果を踏まえ、2015年版の改訂指針をまとめた。

 治療は、ダニやほこり、細菌類など皮膚の刺激となる因子の除去や、皮膚を清潔に保ち保湿剤を使うスキンケア、炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)や免疫抑制薬のタクロリムスの塗り薬などによる薬物治療――の三つが大きな柱だ。

 掃除機をかけ、ダニやほこりを少なくする。湿疹のある部分は、黄色ブドウ球菌など細菌が繁殖しやすいので、こまめに洗い流して清潔に保つ。保湿剤を塗り、皮膚のバリア機能を保つ。

 ステロイド薬は「最強」から「弱い」まで5段階の強度がある。重症度につり合う薬を選び、十分な量を使う。長期間使うと、皮膚が薄くなるなどの副作用があるが、塗り方が不十分だと、かえって治療が長引く恐れがある。かゆみに我慢できずにかくことで、さらに皮膚を傷つけてしまい、症状をこじらせるからだ。さらに悪化すると、皮膚が厚くなったり、乾燥した皮膚がはげ落ちてきたりする。

 こうした事態を避けるため、悪い時にはしっかりと炎症を抑える治療を行い、症状の改善に応じて、徐々に薬の強度を落としていく。

 最近では、見た目がきれいになっても薬の使用を中断せず一定期間使う「プロアクティブ療法」が、症状の再燃を防ぐ効果があることが分かっている。今回の指針では、症状が安定しても保湿剤と組み合わせて週2~3回、薬を使うことが「有用」とされた。

 また、従来、汗をかくと症状が悪くなりやすいとされてきたが、指針では、汗は「皮膚の恒常性維持には重要」とされた。汗には、抗菌作用や保湿成分が含まれ、感染予防や肌の乾燥防止に役立つことも分かってきたからだ。

 ただ、アトピー性皮膚炎の患者は、健康な人の2倍近い時間をかけても半分しか発汗できないとの報告もある。このため、適度な入浴や運動で発汗を促す。放置すると汚れがたまりやすいので、汗をかいたら、シャワーを浴びたり、炎症が起こりやすい部位を水道水で洗ったりしておく。

 指針の作成委員長で、大阪大皮膚科教授の片山一朗さんは「まずは治療をしっかり行い、適度に汗をかくことで、症状の改善につながる可能性がある」と話している。(野村昌玄)

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