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健診や人間ドック、賢い受け方は…専門家に聞く

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 健康で質の高い生活を送るには、定期的な体の点検が重要だ。普段通りの生活をしながら受けることで、異変をいち早く見つけること。少しでも異常値が出たら、放置しないこと。退職しても、毎年受けること――。東海大学医学部付属病院健診センター長の西崎泰弘さんが、健康診断や人間ドックの大切さや、健診施設の選び方のポイントなどについて、BS日テレ「深層NEWS」で解説した。(構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆健診と検診

 「けんしん」には、「健やか」を書く「健診」と、「木へん」の「検診」とがあります。この二つは、少し意味が違っています。

 「健やか」と書く方の「健診」は、健康診断の略ですから、健康であることの確認です。病気がないかどうかを見る。「木へん」を書く方の「検診」は、検査・診断です。特定の病気にかかっているかどうかを調べるために、目的をもって行われる検査のことです。ですから、がん検診とか婦人科検診というのは、「木へん」を書く「検診」です。人間ドックなどは、病気があまりないだろうということが前提ですから「健診」となり、特定健康診査、いわゆるメタボ健診は、メタボリック症候群という、糖尿病になっていく予備軍を厳しい基準で洗い出そうというものですから、これも「健診」を使います。

 つまり、健康診断は、今ある病気も見つけますし、病気になっていく兆候も見つけるという、両方の役割があると考えていただければ良いと思います。

◆退職者、個人事業者、主婦は低い受診率

 会社勤めの時には毎年1回、健康診断を受けていたのに、退職を契機に受けるのをやめた人もいます。しかし、メタボ健診は74歳まで受診の義務があります。自治体が行っているがん検診なども仕事の有無にかかわらず、受診票が送られてきます。会社からの強制がなくても、やはり自分で意識して、健康診断を受けることが大事です。

 会社で受ける健康診断と、退職後の健康診断の基本項目は変わりありません。ただ、会社や健康保険組合の補助などがあると、受けることのできる項目が少し広くなっている場合が多くなっています。

(図1)BS日テレ「深層NEWSより」
(図2)BS日テレ「深層NEWSより」

 全体でみると、調査によって差はありますが、50歳代の人がもっとも健康診断を受けている率が高いようです。図1ではおよそ6~7割程度の人が、何らかの健康診断を受けていることが示されます。しかし、メタボ健診は全対象者の4割程度しか受けていないという調査が2013年に出ています。

 共済組合や健康保険組合連合会所属の人だと7割以上が受けていますが、個人や中小企業になると受ける率が低くなります。また、その身内の方や主婦は更に低くなっています。家事で時間を割けないということだと思われますが、そこは一つの課題だと思います。

◆健診の数値、「単品」より「組み合わせ」で判断

 健康診断の結果通知書は、項目ごとにそれぞれ意味合いが違っていて、別紙に数値の意義が書かれていることもあります。

 糖代謝、脂質代謝、肝機能の項目は、一般健診の基本となる項目だと言え、メタボ健診にも入っています。コレステロールは、LDLコレステロールが「悪玉コレステロール」で、HDLコレステロールが「善玉コレステロール」です。善玉コレステロールにも基準値があって、高ければ高いほどいいということではないのですが、基準値の中では高い方が、動脈硬化になりにくいと言われています。

(図3)BS日テレ「深層NEWSより」

 さて、これらの基本項目について、AさんとBさんを比較した表(図3)があります。これに沿って、少し解説しましょう。

 γ-GTPをみると、Aさんが25、Bさんが511と、大きく異なっています。基準値は79ぐらいで、低くて悪いということはとくにありませんので、25は良い数字だと理解できます。511に関しては、脂肪肝などがベースにあってたくさんお酒を飲んだり、あるいは飲みつけない薬で肝臓に障害が加わったりということを予測させるようなデータです。Bさんの肝臓機能に関する数値は、上から四つの項目まで、いずれも高い。総ビリルビンというのは、黄疸おうだんを表す数字です。私は肝臓専門医ですが、この四つの数値はちょっと危ない状況だと思います。医師によっては「すぐ入院しなさい」と言う数字です。

 γ-GTPは、胆汁の流れ道の上にある酵素です。これが高いということは、この酵素が引き出されているということを意味します。GOT、GPTは、肝臓の細胞が壊れて血中に出てくる酵素ですが、γ-GTPの高さは、細胞が壊れているかどうかとは関係がありません。ですから、γ-GTPだけが高い状態が長く続いても、それほど危ないことはない。ただ、例えばお酒も飲んでいないのに、γ-GTPが基準値の2倍もあるというような場合には、脂肪肝や他の病気、とくに胆汁の流れを少し悪くする免疫が原因となる「原発性胆汁性肝硬変」という病気が潜んでいることも考えられます。一部の薬やサプリメントが影響する場合もありますが、こうした異常値があったときは、基本的には病気を疑っての追加検査が必要になると思います。

 一方、Aさんの方は、総じてBさんよりいい数値が出ているのに、ALPはBさんより高く出ています。これは、基準値の範囲内にあるので、気にする必要はありません。つまり、肝臓機能の検査結果の数値というのは、単品というよりは組み合わせで読んでいくことが必要で、その観点から見ても、AさんのALPの数字は心配ないと言えるわけです。

◆基準数値の逸脱、わずかでも軽視は禁物

 ちなみに、基準値は、医療機関によって異なる場合があります。今、できるだけ統一しようとの学会レベルでの動きがあるのですが、検査試薬や計測機器が異なると、どうしても違う結果が出るなど仕方ない理由も発生します。いずれにいたしましても、受診者としては、基準を若干でも外れた項目があった場合は、気にして指示に従っていただきたい。再検査をするなり、生活習慣を改善することで良くなることも多いので、そうした取り組みをすぐに始めてもらいたいと思います。また、労働安全衛生法で、健康診断で異常な値が出たのにもかかわらず、これを放置していると、何かあったときに労災として認定されないということもあります。

 今年はC判定で、何もしなかったのに翌年はA判定になっていたというケースがあることも確かです。それには、健診を受けた時の食事や運動の内容とか、薬の影響などが関与した可能性も考えられます。いろいろなことが日常生活の中にはありますので、短期間だけ異常値が出て、次にやったら全く問題ないということはあるのですが、だからと言って、「どうせ、すぐに良くなる」と、異常な数値を軽くみてはいけません。

 健康診断の適正な頻度は、多くの人は年1回でいいということが、様々なデータから割り出されています。ただし、身内に特定の病気になった人がいるとか、体質として血糖値が上がりやすいだとか、体重が増えたとか、最近、体がだるいなど、何か変化があれば、ぜひ、前の健診から1年たっていなくても、広く検査することが必要です。

◆人間ドックは自分への投資

(図4)BS日テレ「深層NEWSより」

 職域の健診は、生活習慣病、すなわち脂質異常症とか、糖尿病とか、高血圧などを拾い上げるのが中心になっています。例えば、メタボ健診だと、メタボリック症候群に照準を合わせた健診なので、がんについては全く見ていないのです。

 これに対し、人間ドックとは、人間ドック学会と健保連が定めた基本項目を全て満たしている検査パックを呼びます。メタボリック症候群なども含め、生活習慣病を広くカバーしていますし、がんについても調べます。やはり、死亡順位の高いがんを見つけ出すことに注力していくことが必要で、人間ドックはどちらかというと、そちらの方にウエートを置いています。職場などから補助を受けられる場合には、ぜひ、人間ドックを受けてもらいたいと思います。

 年代的には、何歳だと早すぎるとか、何歳だと遅すぎるということはありませんが、疾病が増えてくる年代、つまり、40歳代を超えたら、健診はもとより、人間ドックも考えることをお勧めします。

 自治体が行うがん健診は、健康増進法に基づいて市町村に移管して行われているものです。単発のがん、例えば、大腸がん検診、胃がん検診、肺がん検診などがあり、一つ一つのがんに特化して行われます。全てのがんについて検診を受けて、なおかつメタボ健診を受けるということであれば、人間ドックとほぼ同等の広い範囲はカバーできますが、何回も通うことになり、結局、一部に自己負担が発生する場合もあります。そうであれば、約半日で全て終えることのできる人間ドックの方が、時間がない人には、効率的で良いという側面もあるでしょう。

 一般的に人間ドックの費用は高いと思われるかもしれませんが、会社勤めでなくても、人間ドックの費用を一部補助してくれる自治体もあります。なによりも、病気になって支払わなければならない医療費や、健康が失われて「Quality Of Life(生活の質)」が縮んでしまうことを考えれば、年に1回の自分への投資だと見てもいいのではないでしょうか。

  「その時だけの作った自分」で健診を受けるのでは、ダメです。人間ドックや健診の直前に、断酒するなどの対応をして数値を良くしようとする人もいます。それを契機に生活習慣を改めることが定着するならば、それは大変結構なことです。しかし、人間ドックや健診を受ける前の1、2週間だけ節制して、残りの350日は適当にやっているというのでは、全く意味がありません。メタボ健診が導入されたきっかけとして、そうした議論があったと聞いています。

 検査結果の数字が悪いと落ち込むからと、その場だけとりつくろっても意味がありません。異常な数値が出たとしても、多くの場合は挽回可能ですから、異常な数値が出がちなことを知らないまま放置しておくことの方が危険で、いつか本当の病気に陥ってしまいます。健康を継続するためには「日々の暮らしをどう見直せばいいだろうか?」とポジティブに考えることが重要です。苦痛にならずに継続できる健康管理を、ぜひ、身に着けてほしいと思います。

 何かの病気で定期的に病院に通っている人は、人間ドックなどを受ける必要はないと考える人もいます。しかし、病院での保険診療は、問題となっている特定の病気とその関連の範囲でしか診ることができないのです。すなわち、健康保険は、なんでもかんでも調べて良いというわけではなく、問題があるところを診断したり、治したりするために使われる仕組みなのです。ですから、病院に通っているから人間ドックを受けなくていいということではなくて、健診や人間ドックを受けて、広く自分の体を調べておくことが重要なのです。

◆オプションの選び方

 人間ドックの「オプション検査」とは、男女の全年代でその検査が必要なわけではないのですが、特定の性別や年代では行った方が良い検査が組まれています。全体のコストを下げるために、選択制のオプションにしておくという側面もあります。脳ドック、心臓ドック、骨粗しょう症ドックなどは、身内にそれらの病気になった人がいるとか、自分自身の症状に疑いを感じた人が受ければいいでしょう。オプション項目を受けて、何も異常がなければ、1年に1回でなくても、例えば2年に1回、3年に1回などで済むものもあります。もちろん、骨粗しょう症のように、年齢とともに悪くなっていく項目は、毎年受けても良いかと思います。オプションの選択に迷ったら、まずは基本コースを選び、そのうえで、胃の症状があれば、より細かく見るために内視鏡を選択するとか、身内に大腸がんの人がいた場合には、便鮮血だけでなく、大腸カメラを選ぶというように、アレンジを加えれば良いのです。

◆異常見つけにくい膵臓、発見増えた大腸

 人間ドックでも異変を見つけにくい部位は、やはりすい臓で、沈黙の臓器と言われます。人間ドックの超音波検査でも、部分的に見えない部分がどうしても存在してしまいます。採血でも、例えばアミラーゼという項目がありますが、唾液腺のアミラーゼでも数値があがってしまうということがあり、膵臓の病気と紛らわしい部分はあります。しかし、アミラーゼの数値を手がかりにして、必要に応じて次に進んでいただきたいと思います。

 一方、大腸がんは人間ドックで見つかる頻度が増えてきています。進行がんではなく、ポリープの段階も含めてのことです。動物性脂肪をたくさんとったり、食物繊維が少なかったり、運動が少なかったりすると、大腸がんになりやすいということが分かっていて、それらが複合的に合わさって増えているのだと考えられています。

 大腸がんは、便鮮血検査で調べます。現在は、異なる日の便を2回採取する「2回法」が多くなっています。ただ、40歳代後半くらいからは、異常がなくても2年か3年に1回、大腸カメラで調べた方がいいと思います。もちろん、大腸カメラを初めて受けるきっかけが便鮮血検査だということでも構いませんが、身内に大腸がんになった人がいた場合などは、大腸カメラの方がいいでしょう。というのも、便鮮血2回法でも、精度は80%後半だからで、10%ぐらい取り漏らすケースがあるからです。

◆年齢などで異なる適切な検査法

 同じ検査でも、複数の検査方法がある場合があります。どれを選択すればいいかは、年齢などによって違ってきます。

 例えば、乳房を調べる検査に、超音波とマンモグラフィーがあります。40歳代未満の若い人は、乳腺がまだ活発ですので、それがマンモグラフィーでは病変と同じように描出されてしまうことがあります。ですから、超音波を選択する方が良いということになります。40歳代後半以降の人は、乳腺組織が脂肪に置き換わって、本当のがんを描出しやすくなりますから、マンモグラフィーの方が良いということになります。

 そのあたりは、人間ドックを受ける時に医療機関側がアドバイスしてくれるところもあります。関連の冊子やホームページなどを参考に、自分で選ぶのも良いでしょう。

 胃がんの場合は、バリウムと胃カメラ(ファイバースコープ)という選択肢がありますが、胃カメラの方が精度は高く、また、バリウムで異常が見つかれば、結局、「胃カメラを飲みましょう」ということになりますから、最近は胃カメラを選択される人が多い。もちろん、バリウムもスクリーニングとしては有益な検査です。例えば、胃の壁が固くなっているかどうかは、内視鏡で見ても分かりませんが、バリウムだと見分けやすいとの利点もあります。

◆健診機関選び、認定や医師の資格を参考に

 健診にかかわる医師たちによって、日本総合健診学会あるいは日本人間ドック学会という学会が組織されています。これらの学会は、優良な施設に対する認定制度をとっています。また、医師に対しても、人間ドック健診専門医という制度を作っています。資格試験を受けて認定する仕組みです。健診だけをずっとやっている医師のみならず、通常の内科医など、いろいろな分野から健診に関わる医師たちの医療の質を均質化して、保証しているわけです。現在、1200~1300人の医師がこの資格を持っています。こうした医師がいる施設であるかどうかも、健診や人間ドックを選ぶ参考になります。

 自宅や会社に近い場所を選ぶというのも、一つの方法です。いざ、病気が見つかった時に、しかるべく医師を紹介してくれるかどうかも、ポイントになってきます。病院に併設されている施設は、健診の結果、要治療となった場合、その病院に当該科があれば、そこで2次検査を受けたり、治療を受けたりできますので、安心です。ほかにかかりつけ医がいても、大きな病院に併設されている人間ドックを受けた場合は、その大きな病院で精密検査や治療をしてもらえるようになりますが、情報はかかりつけ医にフィードバックされるべきで、多くの健診や人間ドックの施設は、そうした対応に留意しているはずです。

 たまに、ウィンドー・ショッピング的に、毎年異なる有名な病院のドックを受け回っている人がいますが、データは経年的につなげて読むことが必要で、先ほども申し上げたように、基準値が医療機関ごとに若干違っている場合もありますので、やはり、毎年同じところで受けていただいた方が良いと思います。

◆「元気」と「健康」は別物

(図5)BS日テレ「深層NEWSより」

 私たちの病院では、アンチエイジング(抗加齢)ドックというものを運営しています。現在、日本全国200ぐらいの医療機関で実施されているようで、増えているようです。これは、動脈硬化の進行やホルモンのバランスの崩れなど、加齢に伴って発生してくる身体的な不都合をとらえ、実年齢と身体年齢の差を調べて病気発生のリスクを洗い出し、それに抗う指導をします。未病段階から問題を見つけるということで、健康増進、1次予防に当たります(図5)。一般の人間ドックでは分かりにくいものを調べるために、関連の項目が多く入っているのです。ある数値に異常があったからといって、症状などは出なくても、その状態を長く放置しておくと問題が発生するであろうという項目が含まれ、その異常値を早期に改善するにはどうしたら良いかを助言しています。

 健診結果を生かすには、医師や保健師の面談のアドバイスを聞き、自分の生活に取り入れていくことが基本中の基本です。異常値を「ちょっとだからいい」などと考えないことです。

 元気だと、健康であると過信してしまうのです。しかし、体が動くことと、体の中で起きていることは、違います。過信せずにチェックしていくこと、また、たばこや大量飲酒、無用に長く紫外線を浴びるなど、体にとって悪いことは早い段階から避けていくことが必要です。

 <2015年7月3日放送の「深層NEWS」をもとに再構成しました。「深層プラスfor yomiDr.」は、深層NEWS(月曜日から金曜日の午後10時~11時放送)の医療関係の放送から、反響の大きかったものについて随時、とりあげます>

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