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呼吸について考える…夏の疲れをとるために

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 夏も終わりに近づき、身体の疲れを感じている方もいらっしゃると思います。そんなときは、呼吸を整えるとよいでしょう。

 人の命にとって、もっとも大切なものは、空気です。生まれてから息絶えるまで、人は、空気がなければ生きていられません。空気がなければ、数分以内に死んでしまいます。こんなに大切な空気の存在をおろそかにしてはいけませんね。サボることなく絶え間なく行われている空気を取り込む動作、それが呼吸です。

 空気は、さまざまな成分でできています。窒素が約78%、酸素が約21%、二酸化炭素が0.04%です。微量成分としては、アルゴン、ネオン、一酸化炭素、ヘリウム、クリプトン、キセノン、メタンなどがあります。

 空気の成分のうち、人の体に利用するものは、酸素と二酸化炭素です。血液の中にあるヘモグロビンは、空気中の酸素を効率的に体の中へ取り入れ、体の中の二酸化炭素を効率的に肺から体の外へはき出すようになっています。このため空気中の酸素濃度が低い場所でも、人は、酸素をうまく取り込むことができます。

呼吸回数は、増やした方がよいのか、減らした方がよいのか?

 ハムスターの呼吸回数は、1分間に約135回といわれています。犬や猫は約30回、人間は約20回、馬は約15回、象は約5回と、生き物の呼吸回数は、様々です。中には、呼吸回数と寿命に関係があるという説を唱える人もいらっしゃるようです。

 呼吸は、意識しないで働く自律神経がコントロールしています。自律神経は、運動したり緊張したりしているときに働く「交感神経」と、休んでいるときに働く「副交感神経」で成り立っています。交感神経中心の状態では、呼吸回数が増えやすく、手足への血流は減少し、末端は冷えてしまいます。さらに、呼吸回数を増やしていくと、「過換気症候群」と同じ状態になります。酸素が増え、二酸化炭素が減ります。すると、血管は収縮し、手足の末端への血液の流れは低下します。

深呼吸をしましょう

 健康のための呼吸法があります。呼吸法は大きく分けると、胸で一杯空気を吸い込む方法と、おなかを使って吸い込む方法があります。一般的に、女性は、胸で呼吸をしていることが多く、「胸式呼吸」と呼ばれています。これに比べて男性は、おなかの筋肉を使って呼吸をしているそうです。これを「腹式呼吸」と呼びます。腹式呼吸は、正確にいうと、おなかの筋肉を使っているのではなく、横隔膜を主に使う呼吸法です。

 胸式呼吸と腹式呼吸は、どちらも呼吸をすること自体に変わりがありません。しかし、主に使っている筋肉が違うため、呼吸による疲労感や肺活量などに影響があります。

 胸式呼吸は、肋骨ろっこつを広げることで肺の中へ空気を取り込むため、肋骨を動かす肋間筋を主に使います。このため、意識して速く呼吸をしたとき、例えば、運動しているときや緊張して深呼吸をするときなど、胸式呼吸になります。腹式呼吸は、横隔膜という大きな筋肉を使っています。腹式呼吸は、リラックスしたときや寝ているときなど、無意識に行われる呼吸です。

腹式呼吸をしましょう

 腹式呼吸は、交感神経と副交感神経のバランスから考えると、副交感神経が主に働く呼吸です。精神的にも肉体的にも、リラックスした状態になりやすい呼吸です。リラックスした状態は、体中の筋肉を和らげてくれます。すると末梢の血管への血液の流れが良くなり、温かい血液が手足末端まで流れてくれます。これによって、夏の疲れをとることができます。

 皆さんが、元気で明るい毎日を過ごすために、呼吸を大切にしてみてはいかがでしょうか。

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今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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