【追悼】報道番組キャスター 黒木奈々さん
一病息災
[報道番組キャスター 黒木奈々さん]胃がん(4)復帰の10日後に事態一転
開腹手術を見送り、チューブを鼻から胃に入れ、点滴を流し、胃の穴をふさぐことになった。気になっていた番組は、早めに夏休みを取った形にして、治療に専念した。10日ほど入院後、鹿児島の実家で静養した。
仕事には3週間で復帰した。胃の方も治ってきたと感じていた。だが復帰から10日ほどの昨年8月、番組終了直後に親からのメールを見て、すべてが一転した。
実家に電話すると、父から「細胞検査の結果、(胃潰瘍せん孔でなく)がんとわかった、と病院から連絡があった」と伝えられた。父が所属事務所と話し、翌日から番組を休むことも決まっていた。
「自分の体より、やっとつかんだキャスターの番組を降板になることが、つらかった。最後の出演になることも知らず、視聴者の皆さんに何のあいさつもなく終わってしまったのが、耐えられませんでした」
電話を切ってメイク室に入り、一人で泣いた。帰宅して事務所の社長に電話すると、「NHKは、『番組降板でなく、ずっと待っているから』と言ってくださった」と知らされた。「大好きな仕事を失う恐怖から少し解放されて、生きる希望が出てきました」
でも、眠れなかった。母にメールしたら、すぐに電話が鳴った。「丈夫な体に産んであげられなくて、ごめんね……」。一番つらい言葉だった。
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報道番組キャスター 黒木 奈々(くろき なな)さん 32
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