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五輪見据えた受動喫煙規制…条例化へ高いハードル

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 2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、喫煙の規制に関する議論が活発化している。

 過去の五輪開催国が受動喫煙を防止する罰則付きの法律や条例を制定したことを踏まえた動きだ。東京五輪をきっかけに喫煙率を下げられるか、国、東京都のたばこ対策への本気度が問われている。

 五輪を開催した国や都市はこの10年、施設内で受動喫煙を防ぐ法律や条例を制定している。違反した管理者や住民に罰金を科す内容だ。スポーツを通じて人類の健康作りを目指す国際オリンピック委員会(IOC)が、「たばこのない五輪」を推進してきたからだ。

 こうした国際的な流れに沿って、国会議員の間でもたばこ規制の議論が始まっている。

 超党派の「受動喫煙防止法を実現する議員連盟」(会長=尾辻秀久・元参院副議長)は、スポーツ施設や医療施設の禁煙、レストランやホテルの喫煙所を設けての分煙を施設管理者らに義務化する制度作りを目指す。議員立法を国会に提出し、罰則付きの法律制定を国に求める考えだ。

 これとは別に、自民党の「受動喫煙防止議員連盟」(会長=山東昭子元参院副議長)も各施設に禁煙や分煙を求める法制化を独自に検討する。「きれいな空気でおもてなしができるよう、受動喫煙防止の規制が必要」。今月上旬に開かれた同議連の総会では医師の訴えに議員らが耳を傾けた。

 米厚生省の報告書は、受動喫煙が肺がんや脳卒中、心筋梗塞などを引き起こすだけでなく、子どもの肺炎や中耳炎、乳幼児突然死症候群の原因にもなると指摘。国立がん研究センター(東京)は受動喫煙の影響により、肺がんと心筋梗塞など虚血性心疾患だけでも毎年6800人が死亡する、という推計をまとめている。

 ただ、規制へのハードルは高い。受動喫煙対策を半年話し合った都の有識者検討会は今年春、条例の制定について「国の動向を踏まえ、18年までに検討する」と判断を先送りした。

 居酒屋やレストランなどからなる日本フードサービス協会は「物理的に分煙室を設けられない店もある。各店の自主的な取り組みを尊重するべきだ」と一律の規制に反対。宿泊業でつくる都ホテル旅館生活衛生同業組合は「全館禁煙にすれば喫煙者が来なくなる。各施設が事情に合わせて分煙を進めるべきだ」と訴える。

 だが、厚生労働省研究班で禁煙対策研究を担当した地域医療振興協会の中村正和医師(予防医学)によると、海外では全面禁煙にしても、喫煙者数の減少を非喫煙者の利用が補うため、飲食店や宿泊施設の売り上げは減らないという調査がある。非喫煙者は食事を注文することが多いため、かえって増える場合もあるという。

 都には公共の場所の原則禁煙や飲食店などの分煙を求める指針があるが、「指針」に強制力はなく完全に守られているとは言えない状態だ。足踏みする都に対し、今年5月、研究者らでつくる日本学術会議は「飲食店従業員をはじめ煙にさらされる人は多い」などと受動喫煙防止の条例化を求める提言を公表した。

 「喫煙室を設けてもドアなどから煙は漏れる。自宅以外の建物は全面禁煙にするべきだ」と中村医師。条例で路上喫煙を禁じる自治体もあるが、空気がこもりやすい建物内の対策こそが大切だという。

 がん研究会がん研究所(東京)の野田哲生所長は「飲食店で、たばこについての知識のない子どもが煙をやむなく吸っているケースがある。彼らを守る視点で受動喫煙対策の議論を早急に進める必要がある」と話している。(米山粛彦)

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