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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

芸能人の妊娠・出産ブログ、怪しい健康情報も…

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メガ恐竜展に行きました!大きな恐竜がたくさんいて娘は大喜びでした

 お盆休みが終わりました。先週は娘の幼稚園の夏期保育がお休みだったので母に来てもらっていたのですが、暑すぎて昼間はあまり出かけられず、娘は狭い家の中でぐるぐる走り回った挙げ句に吐くというようなことを繰り返していました。妹とおいっ子たちが3日間遊びにきてくれて、パワーを持て余していた娘は大喜びで一緒に遊んでいましたが、帰ってしまう時に大号泣して大変でした。今週からはまた元気に幼稚園に行っています。

  私は妊娠24週、7か月に入り、だいぶおなかが目立ってきました。腰が痛くなってきて、寝起きで起き上がる時や料理・洗濯など立ちっぱなしの家事がつらく、ついでに立ちくらみもひどいです。まだ中盤なので頑張るしかないのですが。

  自分が妊娠しているからそういう情報に敏感なだけかも知れませんが、今年は芸能人、有名人の妊娠・出産のニュースが多いような気がします。妊娠・出産・育児についてブログなどを書いている方も多く、私も時々興味から読んでみたりします。診療で出会う妊婦さんやママさんたちの中にも芸能人の方のブログを読んでいて、「○○さんのブログにはこういうことが書かれていたのですが、先生どう思いますか」と聞かれることもよくあり、それなりの影響力を実感することが多いです。

怪しい医療従事者、主観、そして口コミ……

 しかし、内容によっては必ずしも良い影響ばかりではないと思います。特に健康に関わる情報の取り扱いについては気になることも多いです。

 パターンはいくつかありますが、まずは、芸能人の方があまり医学的に根拠のないことを言う医療従事者にかかってしまった場合。良かれと思ってそれをブログに書くと、結果的に怪しい健康情報を拡散してしまうことになります。

 今まで見た例で言うと、「助産師さんにきいたのですが、骨盤に巻くベルトで早産が防げるようです。ちょっとでも役に立てばと思って書きます」とか「ニンニクとキムチを食べると母乳がまずくなるそうです」など。目の前にいる医療従事者に言われれば信じる気持ちも分かるのですが、影響力を考えるとノーチェックでそういった情報が発信されることには実害があると思います。

 次に、健康に影響を与える情報なのだけれど、完全に主観に基づくもの。例で言うと、「私は赤ちゃんの予防接種は同時に2つまでしか行いません。なぜならばそれ以上をいっぺんに受けさせる気がしないからです」などです(これなどはマシな方で、「予防接種を受けさせません」というものもあります)。

 そして、意外に健康被害があるという危険性に気付きにくいのが、口コミを集めるというもの。私程度の知名度の者がやっているブログでも、たまに読者の方に質問すると大勢の方が答えてくれたりしますが、芸能人の方が妊娠経験や子育て経験のある方に質問を投げかけるとたくさんの声が集まります。

 例えば、「赤ちゃんをどうやって泣きやませていますか」とか「ママバッグの中には何を入れて持ち歩いていますか」のような質問はいいと思いますが、「逆子を直すためにやっていたことはありますか」「安産のためにやっていたことはありますか」のような質問には怪しい健康情報がたくさん寄せられ、それをブログ本文に取り上げたりすると、拡散されてしまいます。また、スリングなどの赤ちゃんを抱っこする補助具が安全な方法で使用されていない状態の写真が載せられていたりすることも見られ、読者がそれを正しい使い方だと誤解しないか、その芸能人の赤ちゃんが事故に遭わないかひやひやすることもあります。

「親の選択」や「多様性」で片づけていいのか

 芸能人の発信する情報に限らず、多様な情報があふれていますが、医学や健康に関する情報に関してはメカニズム上ありえないことや健康被害をもたらすもの、またビジネスがらみの偽情報もあり、「子供のためを思って親が選択したことは正しい」「多様性を認めよう」というのが思考停止にしかならないことも多々あります。

 子供は親を選ぶ事は出来ないので、親が子供のために妥当性のある選択をすることが必要です。雑誌や書籍、テレビやネットニュースなどの媒体なら、本来情報の送り手にリテラシーが求められますが(それすらあまり機能していないこともよくありますが)、芸能人の方の発信される情報は個人の日記なのでチェック機能を求めるのは難しいのかもしれません。(本当はあるとうれしいのですが……)。

 このブログをいつも読んでくださる方にはすでに当たり前のことかも知れませんが、ぜひ情報の取捨選択のために基本的な知識を身につけていただけると幸いです。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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7件 のコメント

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3年で常識が変わった

A子1961

今は20歳を過ぎた長男が生まれた時、産科の看護師さんにも検診の保健婦さんにも「授乳は3時間あけて」と言われた。世間的にもそれが常識だった。また「...

今は20歳を過ぎた長男が生まれた時、産科の看護師さんにも検診の保健婦さんにも「授乳は3時間あけて」と言われた。世間的にもそれが常識だった。また「抱き癖がつく」と、抱き続けることはいけないとされていた。

3年後長女が生まれた。「授乳は赤ちゃんが求めるだけ」「出来るだけ抱っこやスキンシップを」長男を生んだ時と同じ産科で、当たり前のように言われてショックだった。


私たち夫婦は卒乳は子供と話し合おうと考えていて、2歳の誕生日まで卒乳のための行動を起こさないと決めていた。

1歳半の頃調子を崩した長男を小児科に連れて行った時、高齢の小児科医に「1歳過ぎてもおっぱいあげてる親がどこに居るか」と怒鳴られた。その大声に、待合室にいた主人があわてて診察室に入ってきた。
私たちは薬も貰わずその小児科から出た。

その後長男とは2歳のお誕生日のお祝いの後、卒乳について話し合いをした。長男は「おっぱいは好きだけど2歳でおっぱいを飲んでいるのは恥ずかしい」と言った。改めて私たちは卒乳のお祝いをした。


長男長女で性格も育てやすさも大いに違った。情報は沢山有っていい。なぜあれもこれも断定的なんだ!と何度も思った子育てでした。

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信じてしまうタイプです

ママ歴数年

旧帝大の病院にいらした助産師さんが書いた小冊子の内容、信じてました…。長女が腸捻転という病気を持って生まれ、出生後の入院中に、まさにその内容を思...

旧帝大の病院にいらした助産師さんが書いた小冊子の内容、信じてました…。長女が腸捻転という病気を持って生まれ、出生後の入院中に、まさにその内容を思い出し、病気は私のせいだったのか、、、と考えてました。
幸い、娘はゆっくりではありますが、元気にしています。冊子は、思い出したくなくて、その後捨てました。
脅しに近いと言われれば、確かにそうですね…。でも妊婦さんがよく使う製品に必ずついており、言葉のままに信じる人もいると思います。
情報の受け方は難しいです。ぜひ啓蒙を続けて下さい。

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シャットアウトする、聞き流す

もへじ

宋先生が口を酸っぱくして言って下さることを願うばかりです。この記事を母子手帳に載せたらどうかなぁと思いました。啓蒙になると思うのですが。数年前に...

宋先生が口を酸っぱくして言って下さることを願うばかりです。この記事を母子手帳に載せたらどうかなぁと思いました。啓蒙になると思うのですが。
数年前に「レメディ」が問題になったのを思い出しました。乳児が死亡する事態に至るまで、「レメディ」を取り上げる気にならなかった専門家の気持ちは想像できます。しかし、「こんなもの効くわけないだろう」と黙殺するのではなく、宋先生のような専門家の方が、折に触れて、注意喚起してくださることはとても意義のあることだと感じています。
第一子を妊娠中、「スイカ型のお腹」と「なすび型のお腹」という説(?)を、とある小冊子で目にしました。
妊娠中のお腹の形(見た目)のことなのですが、前者は「子宮がまるくて、胎児がゆったり収まっている状態」の形で、育てやすい赤ちゃんが生まれる。後者は「子宮が縦長で、胎児が窮屈な状態」の形で、生まれてくる赤ちゃんは、体がゆがんでおり、育てにくい(よく泣く、抱っこしにくい等)とのこと…。根拠として載っていた超音波検査の画像を見てもよくわからないし、文章全体に漂う「脅し」の雰囲気が気に入りませんでした。妊娠中はナーバスになることもあるだろうに、その気持ちにつけ込むのは悪質だと感じました。旧帝大系の産婦人科に長年いた助産師さんが書いているのですが、これ、本当なんですかねぇ。
最近では、長年の友人から「0歳児のうちに動物園に行くと花粉症にならないんだよ!」と言われました。どこでそんな情報を仕入れてくるのかと呆れましたが、大学まで出てこんなことをあっさり信じるなんて、むしろ悲しい。殊、妊娠・出産・子育てとなると、鍛えてきた知性も吹き飛んでしまうのでしょうか。
私も気をつけたいと思います。

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