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がんの新しい予測技術…血液のアミノ酸から評価

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 がんの新しい予測技術の開発が進んでいる。血液中のアミノ酸のバランスから見た目や症状に表れない超早期のがんのリスクを調べたり、がん細胞のDNA(デオキシリボ核酸)に結合するメチル基の数から悪性度を予測したりすることが可能になってきた。

 細胞ではDNAの遺伝情報をもとに、体を構成する様々なたんぱく質が作られる。がんは、DNAの変異などが原因で、たんぱく質が正常に作られなくなり、細胞の性質や姿形が変化して、増殖を繰り返すようになったものだ。

 特徴が外にはっきり表れる前から、がん細胞の内部では変化が起きている。体の中では様々な細胞が連携しているので、がん細胞の微妙な変化も血液の数値などに表れる。新しいがんの予測技術は、膨大な患者データを基に、こうした変化を読み取るものだ。

 味の素は、たんぱく質の材料となるアミノ酸の血液中の濃度バランスからがんのリスクを予測する方法を開発した。開発担当の安東敏彦さん(58)は「5ミリ・リットルの血液から、胃がんなど7種類のがんの発症リスクを3段階に評価します」と話す。

 味の素は国内15の医療機関の協力を得て、がん患者2000人と健康な1万5000人の血液中のアミノ酸の濃度を調べて、胃がんなどで、それぞれのがんに特有のアミノ酸の濃度パターンを発見した。

 血液からがんを判別する方法としては、がん細胞が作る特有のたんぱく質を測定する方法があるが、がんが進行しないと変化が出なかった。安東さんは「アミノ酸濃度は、様々なたんぱく質の合成や分解を反映しており、体調の変化がより早く表れる」と話す。

 がんの確定はできないが、発症リスクを推定する手法として、既に、960施設で人間ドックのがん検診に取り入れられている。

 味の素は、がん以外の生活習慣病にもこの手法が応用できるとみて研究を進めている。

 国立がん研究センター分子病理分野長の金井弥栄さん(51)らは、手術で切除したがん細胞のDNAに結合するメチル基の数を調べて腎臓がんの再発や転移のしやすさを予測する技術を開発した。

 メチル基は、DNAに結合して、作るたんぱく質の量などを調整している。DNAの変異だけでなく、メチル基の結合の変化もがんの原因となる。

 金井さんらは、腎臓がん204症例を分析し、メチル基がたくさん結合すると、がんの悪性度が高くなるDNA領域299か所を突き止めた。金井さんは「細胞の顕微鏡写真では全く判別ができない段階でも、この領域のメチル基の数をしらべることで、手術後に再発や転移しやすいがんか予測できる」と話す。

 今春、2018年の実用化を目指して小型診断装置の開発にも着手。腎臓がんと同じようにDNAのメチル基が発症に関与する胃、肝、大腸がんでも応用が期待されている。(山田聡)

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