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骨盤内の仙腸関節が招く痛み…問診での絞り込み 有効

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 そけい部やお尻が痛み、いすに座ったり、あおむけに寝たりできない。そんな症状があれば、骨盤内の「仙腸関節」が招く痛みの疑いがある。画像では問題が見付からず、「原因不明」とされがちだが、どこが、どんな時に痛いかを確かめることで診断につながる。

画像でわからず

 仙腸関節は、骨盤にある仙骨と腸骨をつなぐ部分で、左右に一つずつある。関節といっても、わずか数ミリしか動かない、珍しい関節で、体が動く時に上半身の重みを和らげ、下半身に伝える役割がある。

 普段、意識しないかもしれないが、ふとしたはずみや出産などをきっかけに関節がずれることがある。ずれると、骨盤の後ろ側にある靱帯(後仙腸靱帯)が硬くなり、神経が刺激されて痛みが起きる。

 この神経は下半身のいろいろな場所につながっているが、痛みが起きやすい場所がある。JCHOジェイコー(地域医療機能推進機構)仙台病院腰痛・仙腸関節センターなど国内6病院の共同研究では、仙腸関節のずれが原因の痛みと診断された患者は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄きょうさく症患者の腰痛と比べて、明らかな特徴があった。

 まず、お尻の痛みがある。患者に最も痛む部位を1本指でさしてもらう「ワンフィンガーテスト」を行うと、82%が後仙腸靱帯の周辺を示した。いすに座るとお尻の痛みが増す患者も7割に上った。そけい部の痛みも患者の半数以上が訴えた。

 こうした痛みの特徴を聞き取り、仙腸関節が原因と疑われたら、ブロック注射を行う。後仙腸靱帯か仙腸関節内に局所麻酔薬を注入し、靱帯の緊張や神経の刺激を和らげる。痛みが緩和されれば、診断が確定される。

 治療は、このブロック注射や、骨盤を安定させるゴムベルトの装着、関節のずれを矯正する理学療法、高周波で神経を焼く高周波熱凝固法、鎮痛薬を組み合わせる。最終手段として、関節を固定する手術もある。

 同センター長の村上栄一さんは、「痛みの特徴を知れば、専門外の医師でも疑いのある患者を絞れるが、周知されていないため、診断されずに困っている患者がたくさんいる」と話す。

 山梨大医学部4年の室谷幹むろたにもときさん(29)も、約10年前に痛みが出てから4年間、計7か所の病院をめぐった。「原因不明」とされ、家族の勧めで精神科も受診した。

 2009年に同センターで診断を受けた。治療でいすに座れるようになり受験勉強を再開、念願の医学部に合格した。「患者の訴えをよく聞き、簡単に原因不明と片づけない医師を目指す」と話す。

 村上さんによると、近年、原因不明とされた腰痛の中に少なからず仙腸関節のずれによる痛みが含まれるとわかってきたため、米国では11年、ドイツで14年に医師の研究会が組織された。

 日本でも09年に、日本仙腸関節研究会が発足、ホームページ(http://www.sentyo-kansetsu.com/jp/)で情報提供を行っている。(中島久美子)

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