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[動き出す予防医療]ゲーム感覚の扱いを憂慮

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 子供の将来を想像するのは楽しいものです。ところが、こんな空想はやめて、遺伝子テストで判断しようというサービスが存在します。子供の性格傾向、運動能力、音楽の能力など様々な能力を子供自身の遺伝情報から判定するというのです。子供の将来を遺伝情報で判断できるのでしょうか。

 例えば、DRD4という遺伝子を調べて、好奇心や社交性の高さを調べるというサービスがあります。ごく簡単に言うと、この遺伝子に存在する同じ暗号の繰り返し回数が多いほど、好奇心が旺盛な性格と関連している、という論文を根拠にしているようです。

 私の研究室のスタッフの経験を聞くと、この問題の深刻さを考えさせられます。本人が快諾してくれたので、その体験を紹介しましょう。この人は10年ほど前、化学者のタマゴだったのですが、研究に協力した関係で、自らのDRD4遺伝子のタイプを調べました。結果は、最も繰り返し回数が少ないタイプでした。すると、「好奇心が低い遺伝子型では、研究は向かない」と早々に判断し、事務職に転向したのです。ところが、私が思うに、この人は好奇心が旺盛です。第一、研究には、好奇心だけではなく、コツコツと課題に向き合う地味な側面も必要です。

 性格のような複雑な形質は、たった一つの遺伝子で支配されているわけではありません。むしろ、環境の影響が非常に大きいのです。さらに、性格と職業適性は、また別の問題です。

 親として、子供の成功への手引きをしてやりたいと思えばこそ、子供の将来の可能性を狭めるような軽率なことは避けたいものです。時には、人生を変えてしまうほどの意味を持つ遺伝情報が、ゲーム感覚で扱われている実態を憂慮しています。(林崎良英・理化学研究所プログラムディレクター)

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