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最新医療~夕刊からだ面より

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心筋や血管に中性脂肪…新たな心臓病の診断手引

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 心臓の筋肉や血管に中性脂肪がたまる病気を、大阪大循環器内科助教の平野賢一さんらの研究グループが発見し、診断の手引をまとめた。国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」の難病対策事業として、治療薬の臨床試験(治験)も年内に始まる予定で、重い心不全や狭心症と診断され、治療も難しかった状況が変わりつつある。

 この病気は「中性脂肪蓄積心筋血管症」で、成人で発症する。主な症状は動悸どうきや息切れ、疲れやすさ、胸の痛みなどで、突然死するケースもある。糖尿病との合併率も高い。

 心臓は主に脂肪をエネルギーにして動いているが、この病気では脂肪を分解できず、細胞内に中性脂肪をためこんでしまう。

 中性脂肪を分解する酵素がないのが原因の原発性と、原因がはっきりしない特発性がある。原発性の患者はわずかで、特発性がほとんどを占める。国内の患者は4万~5万人に上ると推定されている。多くの患者が難治性の狭心症や心不全などと診断されて治療を受けているとみられる。この病気の患者は、血液中の中性脂肪の値や体重、体形に変調がなくても発症するため、診断が難しい。

 診断のポイントは〈1〉白血球に脂肪をためこんだ空胞くうほうが見られる〈2〉心臓の筋肉に酸素を送る冠動脈の壁の外側から脂肪が蓄積している〈3〉脂肪による血管の狭まりが一般的な動脈硬化のように一部に偏らず全体的――などだ。

 平野さんがこの病気を発見したのは2008年。拡張型心筋症で入院した40歳代男性の心筋や冠動脈の細胞を調べたところ、中性脂肪が充満していた。また、心筋梗塞を発症した60歳代女性では冠動脈に狭まりが見つかり、中性脂肪の蓄積が原因と分かった。

 中性脂肪は、肉や魚などほとんどの食物に含まれる長鎖ちょうさ脂肪酸が結合することで生成される。平野さんは、長鎖脂肪酸より分子量が小さく、体内での吸収・分解が早い中鎖脂肪酸を使った食事療法を行った。中鎖脂肪酸はヤシやココナツの油や母乳などに含まれ、既に難治性てんかんなどの治療に使われている。

 患者会会長の三浦祝男いわおさん(62)の場合、以前は歩くことも困難だったのが、2年半の食事療法で息切れが軽くなり、車の運転もできるようになった。ただし、食事療法は、管理栄養士の指導の下、中鎖脂肪酸の摂取量を増やし、長鎖脂肪酸を抑える特別な献立が必要で、人によっては好みが合わず、続けるのが難しい。

 平野さんらのグループは、患者が簡単に継続して中鎖脂肪酸を摂取できるよう有効成分を精製した治療薬の開発を目指した。中鎖脂肪酸が長鎖脂肪酸の代わりに心臓を動かすエネルギー源となり、中性脂肪の蓄積を抑えることを期待している。年内にも大阪大病院で治験が始まる見通しだ。平野さんは「製品化できれば、症状の改善だけでなく、早めの服用で発症予防につなげられる」と期待する。

 三浦さんは「3年前は、息切れで腕を上げることもできなかった。原因不明で途方に暮れていたが、原因が分かり、食事療法で光が差した。食事療法ができず、苦しんでいる人もおり、薬が開発されることを願っている」と話す。(原隆也)


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