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介護・シニア
シニアの再就職に重要な「経験の棚卸し」
定年退職後も仕事をしたいと考える人は多いが、一般的に、年齢が高くなるほど採用されにくくなる。高齢者がうまく仕事に就くにはどうすればいいのだろう。
東京都足立区にある「ハローワーク足立」は、55歳以上の就労支援に重点を置く。同所は、高年齢者の求職者比率が高いためだ。
70歳代の元タクシー運転手の男性は、時間の短い仕事をしたいと希望。2種免許を生かせる介護施設の送迎の仕事を勧められ、すぐ採用された。貿易会社で働いていた60歳代の女性は、英語力を生かしたいと、外国人がよく利用するホテルの案内などをする仕事に就いた。職業訓練校に半年通ったという。
同ハローワーク主任就職促進指導官の月岡慎治さんは、「高齢者の職探しで大事なのは『経験の棚卸し』です」と強調する。
これまでの仕事内容や自分ができることを、応募書類に具体的に書く。例えば、「総務の仕事を○年担当し、人事や労務管理に精通している」「貸借対照表を作っていた」といった具合だ。書類の書き方や面接の受け方は、希望すればハローワークで指導が受けられる。関心を持った求人への応募状況や、その企業が求める人物像など補足的な情報も得られる。
同ハローワークを利用して就職した人の職種のトップは清掃で約4割。タクシーの運転手や警備員が1割強、事務や車での送迎などが1割弱となっている。
「事務職を希望する人は多いが、高齢者向けの事務の求人は少ない。職種にこだわり過ぎず、間口を広げることで、自分に合う仕事に出会う可能性も増えます」と月岡さん。
高齢者の就労は、定年前の勤務先で再雇用されたり、取引先に再就職したりする例が多い。
新たに探す場合は、ハローワークやシルバー人材センターに行くのが一般的。ただ、多くのシルバー人材センターで紹介されるのは、草むしりや駐輪場整理など、雇用関係のない臨時の仕事が多い。
労働力人口が減る中、高齢者も働き手として期待がかかる新しい仕事もある。
高齢者の就労に詳しい東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授は、「何歳になっても新しい仕事に挑戦できる。地域の困りごとを解決する仕事は特にやりがいがある」と勧める。
例えば、地域のボランティアらが担い手になる「要支援」の人向けのサービスや、保育所や学童保育を手伝う仕事などは高齢者の参加が期待されている。後継者不足に悩む農業に携わるのもいいという。
ただ、高齢者の場合は、体力などの個人差が大きい。仕事を選ぶ際、その仕事ができる体力があるかどうか確認する。また、前職で管理職だったとしても新しい仕事では意味をもたない。若い人の下で働くのも当たり前、という心構えが必要となる。
秋山さんは、「退職間際ではなく、40歳代ごろからセカンドキャリアについて考え、できれば資格を取ったり勉強したりして準備するといい」と助言している。
高齢者の仕事探しのポイント |
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・週に何日、何時間働きたいのか、通勤時間はどのぐらいまでかなどを決める ・希望する仕事ができる体力があるかどうか考える ・「経験の棚卸し」をする ・前の職にこだわらず、間口を広げて様々な職種を検討する (月岡さん、秋山さんの話をもとに作成) |
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