心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
眼窩窮屈病…珍しくないのに眼科医が知らない理由
Cell, Nature, Science。御三家といわれる国際的科学誌です。日本でも御三家雑誌に1本でも論文が載れば、大学教授の席が約束されたようなものだとされ、学者
さて、前回とりあげた強度近視における
原因不明というのは、患者にとって将来が見えず、不安を増大させる大きな要素となります。その人の強度近視による合併症として説明できれば、治らなくても納得がゆくものでしょう。しかも、多くの例は、特殊なプリズムレンズを使った眼鏡を合わせることで対応できます。
何軒もの眼科や脳神経外科などで「わからない」、「異常ない」と言われて、すっかり意欲をなくしていた人が、急に笑顔にもどって普通の社会生活に戻れるのですから、眼科臨床の上では決して小さな発見ではないと、私は自負しています。しかも、強度近視の日本人は多いせいもあって、私どもの眼科病院では、こうした症例がすでに200例近く見つかっており、決して珍しい話ではないのです。
しかし、この発見そのものは科学という世界では、御三家に掲載されるような大それたものではありません。眼科というローカルな領域の
私の研究論文も過去には20編以上がそうした雑誌に掲載されていますが、論文1本が一流誌に掲載されるまでには、実験のやり直しや追加実験、査読者(レフェリーといって論文の価値を判断する研究者)の著者を困らせるような質問への回答作り、原稿の書き直しに次ぐ書き直しと、かなりの労力を費やします。それでもそこまでゆけばいい方で、「創造性がない」、「関心がない」、「つまらない」などと掲載拒絶の憂き目に合ったこともあります。小さな発見でも、「臨床に役に立つので皆に知らせたい」と思うような内容ほど、「話が未熟だ」と拒絶にあいやすいものです。
そんな体験から、眼窩窮屈病の論文は、掲載されやすい、最近流行のオンライン上だけで閲覧できる英文誌に投稿しました。
新聞、テレビがこぞってトップに取り上げるニュースは多くの人が知るところとなりますが、片隅に載ったような記事に注目する人は少ないのと同じように、そのオンライン雑誌で発表された内容を知らない眼科医が多くいても、それを責めることはできないでしょう。
眼科という狭い領域でも、人口に
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