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茂木健一郎のILOVE脳

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名古屋駅で起きる不思議な現象

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 仕事柄、全国各地をいろいろと回ることが多いのですが、そんな中、とても不思議な現象が時々起こる場所があります。

 それは、ずばり、JRの名古屋駅!

 いつも、というわけではないのですが、新幹線を降りて改札へ歩いていたり、あるいは、改札から入ってホームに向かっているその一瞬の隙をついて、不思議なことが起こることがあるのです。

 私は、移動する時は、大抵、かなりの速いスピードで歩いています。

 せっかちだということもあるのですが、基本的に早足が好きなのです。決して、「トレーニング」しているというわけではないのですが。

 そんな時、横や、後ろから、さっと誰かが近づいてくる。

 何だ、なんだ、と本能的に身構えると、その人は、私に向かって、いきなり、「色紙」を差し出すのです。

 「あの〜、サインお願いできませんか?」

 「あっ、はい……」

 見つかれば逃げ場もない、というわけで、当惑しながらも、さささと、絵か何かを描いてごまかすのですが、そんなことをしながら、私の中では、さまざまな疑問が湧き上がるのです。

 おかしい。

 何か、おかしい。

 職業柄、ある程度顔が認知されているので、街を歩いて声をかけられることは、確かに時々あるのですが、名古屋駅で起こるその手の事象は、どこか不可思議なのです。

間髪入れない見事な声かけ

 まず、私を認知してから、声をかけてくるまでの時間が、異様に短い!

 普通だったら、「あっ、知っている顔だ!」と思ってから、「どうしよう、声かけようかな。握手だけでもしてもらおうか。思い切って、サインしてもらおうかな、あっ、行っちゃう、急がなくちゃ!」と声をかける決断をするまでに、短くても10秒やそこらの時間が経過するものではないのでしょうか。

 ところが、名古屋駅で時々遭遇する不思議な人たちは、私の姿を見て、あたかも「スクランブル発進」をしたかのような、間髪を入れない、見事な声かけをしてくるのであります。

 私がその「エリア」に現れてから、「スクランブル発進」をかけるまでに、経過した時間は、おそらく数秒以下。短い時には、2、3秒で「すみません!」と声かけが行われるのです。

 それくらい見事な反射神経を見せる「名古屋の人」の正体は、一体何なのか?

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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