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最新医療~夕刊からだ面より

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手術後の回復促進…手順見直し 入院も短く

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 手術前後の食事制限や痛みのコントロールなど、手術の入院期間中の手順を見直すことで、患者の回復力を高める「手術後回復促進プログラム」。欧米で普及しているが、国内でも導入する病院が広がりつつある。


 「痛みがなくて驚きました。食事も食べられ、元気になった気がします」

 札幌市の手稲渓仁会病院で手術を受けた女性(79)はこう話す。

 同病院では2011年から大腸がんの手術で「手術後回復促進プログラム」を導入。現在は、胃がんと膵臓がんの他、婦人科の手術の一部でも取り入れている。

 かつて日本の病院では、手術前後は飲食をやめて手術後は安静にして回復を待つというような対応が当たり前だった。

 一方、欧米では1990年代から、従来の入院中の対応が本当に患者のためになるのか、一つ一つ検証する研究が進められてきた。プログラムは、こうした研究の結果、患者の回復力を強化するとわかった処置をまとめた。〈1〉手術前後になるべく口から栄養や水分をとる〈2〉手術中は体が冷えないよう温める〈3〉短時間で目が覚める麻酔薬を使い、手術後はなるべく早く体を動かす〈4〉鎮痛薬で手術後の痛みを抑え、尿道に入れた管はなるべく早く取り除く――などが推奨される。推奨項目を参考に、各病院が独自の手順を組み立てる。

 例えば、手稲渓仁会病院では大腸がんの腹腔鏡ふくくうきょう手術の場合、以前は手術前日の昼から絶食だったが、前日はスープ食、当日は炭水化物が入った飲み物を飲むようにした。また、手術後3日目から食事を開始していたが、翌日からスープ食を始め、早めに普通の食事に戻すことにした。

 同時に、腸を活発に動かすため、体の状態に応じて手術の翌日から病棟内を歩くリハビリを開始。動くのに邪魔になる管は、必要最小限に抑え、なるべく早く取り除くようにした。

 痛いと食べられないので、「自己調節式の硬膜外麻酔」も導入した。背骨の近くに細い管を入れ、痛みが大きくなりそうだと感じたら、ボタンを押すと、鎮痛薬が注入され、自分で痛みをコントロールできる。

 導入後、手術後の入院期間は8日間から5日間に減った。1回の入院にかかる医療費も平均で12万円削減できた。同病院外科部長の中村文隆さんは「痛い、食べられない、動けないという患者さんの苦痛も減り、回復を実感してもらえる」と評価。「痛みをコントロールする麻酔科医や管理栄養士、リハビリスタッフなどの協力が必要だが、手順を見直すことで、どこの病院でも実施できる」と話す。

 麻酔科医で、神奈川県立保健福祉大教授の谷口英喜さんによると、専門学会などでこのプログラムの実践成果を発表する病院は増えており、全国に広がりつつある。谷口さんが麻酔科医として勤務する神奈川県立がんセンターでもプログラムの導入後、入院期間が短くなり、再入院率も減っているという。

 谷口さんは「入院をきっかけに体力や認知機能が落ちやすい高齢の患者への効果は特に大きい。さらなる普及が望まれる」と話す。(館林牧子)


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