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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

「2歳まではお母さんと一緒にいたい…」市長発言、根拠なし! 所沢保育園問題

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 妊娠17週に入りました。5か月に入ったら血糖測定を自主的に始めようと思いながらも、忙しさに流されて、分割食(炭水化物をいっぺんに摂取せず、6回に分けてる方法)だけ行っています。娘は、幼稚園で「妹か弟がいる人?」ときかれて、赤ちゃんが生まれてくることを先生に言ったそうです。今のところ楽しみにしてくれているのでありがたいです。

 先日このような報道がありました。

少子化に知恵 育休後 元の保育園へ 所沢市が保証制度

 埼玉県所沢市は、保護者が下の子の出産に伴う育児休暇に入った場合、保育園に通う上の子を退園させる代わりに育休明けに、定員枠を超えて元の保育園に戻れるよう保証する制度を近く、導入する方針を固めた。同市は16日開会の市議会に「育児休業復帰後特別預かり事業」として、児童4人分の関連予算237万円を含む一般会計補正予算案を提案する。

 制度は、待機児童の解消を進める一方、慣れ親しんだ保育園に戻れないことを心配して、母親が出産をあきらめないようサポートするのが目的。 具体的には、保護者が育児休暇に入った時点で、保育園に通う0~2歳児を退園させるが、育休明けの入園選考の基準点を上の子、下の子とも100点加算する。同市によると、市内保育園では、平均65点が入園のボーダーラインとされ、人気の園も90点あれば入れるという。

(2015年6月16日 読売新聞)

保育環境の変化 幼い子どもにデメリット

 所沢市で待機児童解消のために、第2子以降を出産して親が育休を取得した場合、保育園に入園していた2歳以下の上の子は退園しなければならなくなったという報道です。

 藤本正人市長が「子どもは2歳までは『お母さんと一緒にいたい』と言うはずだ。この制度変更はとてもいいものだと思う」と話していると伝えている新聞もあります。所沢市のこの方針に対し、父母から強い反発があり、市を提訴するに至っているということです。

 この問題の背景には保育園の定員の不足があり、限られたパイをどう分け合うかを考えた場合に、下の子の育休のため自宅で養育可能である2歳までの子どもに退園してもらおうという結論になったと思われ、実際にそのような制度になっている自治体も複数あるということです。他にその枠を待っている人がいるため、仕方ないと言えば仕方ありませんが、小さな子どもにとって慣れ親しんだ保育園を退園させられ、育休明けには同じ保育園に戻れるかどうか分からないためコロコロと環境が変わるというのはデメリットだと思います。保育園に入園したり退園したりすることに不安を感じる親の中には、退園させられる年齢を過ぎてからでないと第2子を産めないと考える人もいるとの新聞記事もあり、第2子を産み控える原因にもなってしまいます。

利用希望者を分断 行政の罪は重い

 このニュースに対するSNSの反応をみていると、「家に母親がいるのだから退園は当然」という意見と、この制度に対する反対意見の真っ二つに分かれていました。子どもがいない人や専業主婦家庭など保育園を利用しない人や第1子の保育園入園の空きを待っている人と、第1子が保育園児で第2子を産もうという人では意見が異なるのは当然だと思いますが、慢性的な保育園のキャパシティ不足を解消できず、保育園の利用希望者同士の争いにしてしまっている行政の罪は重いと思いました。

 所沢市の藤本正人市長といえば、小中学校にエアコンを設置することについて「快適さを優先した生活を見直す」として中止を決め、住民投票に発展したことで記憶に新しいのではないでしょうか。その市長が「子どもは2歳までは『お母さんと一緒にいたい』と言うはずだ」という思い込みとしかいいようがない発言をされると、限られた保育園の枠の有効な使い方以外の問題点を感じてしまいます。

 よくある3歳児神話や今回の発言は、特にエビデンス(根拠)のないものです。複数の児童精神科医に尋ねても、主として養育し愛着形成の対象となる人(通常の場合は母親か父親)がいれば、必ずしも24時間一緒にいなくてもよいとの答えでした。

 ごく参考までにうちの娘の例を出しますと、1~2歳の頃保育園が楽しすぎて早めに迎えに行くと怒られたことが何度もありますし、3歳になってもママと一緒にいたくて泣くこともよくあります。娘だけではなく、そういう子どもは少なくないでしょう。そんなに制度にとって都合よく「何歳までは母親といたい」というものではなく、同年代の子どもたちと育ち合う時間と親と一緒にいる時間の両方が子どもにとって大事なのだと思います。この市長の発言は、「母親と昼間一緒にいられない保育園児はかわいそう」という偏見を助長するもので、今回、保育園の保護者による提訴を後押ししたものではなかったのかと思います。

子育てへの偏見 待機児童解消の言い訳に使うな!

 子育てに関する根性論や偏見についてはこちらの記事で何度も取り上げていますが、行政が待機児童の解消の言い訳として使うという事例は非常に重大だととらえます。それよりも保育園を増やし、子どもを産みたい人の背中を後押しする行政を粛々と行っていただきたいものです。

 

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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27件 のコメント

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出産時の受け入れ

うーん

私がいる地区では、保育園の申請に、「出産前後2か月の方」とあります。親元が幸せとかそうでないとかは置いといて、本当に頼る人がいないし、お金もない...

私がいる地区では、保育園の申請に、「出産前後2か月の方」とあります。
親元が幸せとかそうでないとかは置いといて、本当に頼る人がいないし、お金もない場合、
出産時に第1子を保育園に預けられるか、そうでないかはそうとうな違いがあると思います。

ちなみに育休時は時間短縮で9-16になります。
一番短い時間ですね。

そうなることで、産後で体を動かすことも大変な時期、新生児を抱えて保育園に行かないで済みました。
旦那は定時より多少早くても仕事に行きながら出産を乗り切ることができます。

親と一緒の方が良いと言いますが、出産後2か月程度は考慮して頂きたいと思いますね。

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子沢山の保育園が有ります

ユコタカ

初めてメールします。このワンモアベビーを最近知りました。私が、預けている保育園は、子沢山のお母さんが沢山います。3人、4人子供のいるお母さんが多...

初めてメールします。このワンモアベビーを最近知りました。
私が、預けている保育園は、子沢山のお母さんが沢山います。3人、4人子供のいるお母さんが多いのです。かく言う私も、中学生筆頭に4人子供がいます。
二人目を壁の感じる気持ちも分かります。ですが、この保育園のお母さん達の環境などが分かると、何かヒントになるのでわないかと思っています。
良ければ、岐阜県瑞穂市の瑞穂市立西保育・教育センターを訪ねてみてください。

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感謝の気持ち

けむけむ

子どもって、一体、誰の子供なのでしょうか?自分の子供ですよね。基本は、自分たちで育てるものではないのでしょうか?(例え両親が別れていても養育費の...

子どもって、一体、誰の子供なのでしょうか?

自分の子供ですよね。

基本は、自分たちで育てるものではないのでしょうか?(例え両親が別れていても養育費の支払いなどでその責任は果たせますよね。)

ただ、経済的な理由や、キャリアを中断させたくない方もいると思うので保育所は必要だと思います。

しかし、保育所に預ける児童には多額の税金が使われているのも事実です。

保育料や保護者が払う税金以上のものが。

今、保育所に子供を預けて働きに出られているのは、独身者や子供のいない夫婦、専業主婦世帯の支払う税金に支えられているということを少しだけでも意識し、感謝の気持ちをもっていれば、家に居るのに子供を預けたいという発想にはならないと思います。

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