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視覚障害者に”舌で見る”機器―米当局が承認

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文字の判読も可能に

 米食品医薬品局(FDA)は6月18日、視覚障害者に向けた”舌で見る”機器「Brain Port V100」の米国内での販売を承認したと発表した。カメラの映像を電気信号に変換し、それを舌に装着した電極で受信するというもの。開発元の米ウィキャブ(Wicab)社によると、使えるようになるまで1年ほどの訓練が必要だが、文字の判読などが可能になった例もあるという。

映像から変換された電気信号を舌で感知

 視覚障害は、弱視(視力が弱い)と全盲(全く見えない)を合わせたもので、2006年に厚生労働省が行った調査では、国内の患者数は31万人とされている。また、厚労省研究班の調査から、原因で最も多い病気は緑内障で、糖尿病網膜症、網膜色素変性症などが続く。世界的には白内障が原因のケースが最多だが、治療技術が進んでいる日本では6番目となっている。

 治療は、原因となっている病気を治すことが重要。しかし、視力が戻るケースは限られており、人工網膜や、カメラからの映像を脳に直接送る方法などがあるものの、手術が必要な上に、治療法として確立しているわけではない。

 今回、FDAに承認された「Brain Port V100」は、目が見えるようになったり、映像が脳に届けられたりするわけではなく、サングラスに搭載されたカメラの映像が電気信号に変換され、舌先に着けた電極を通して舌に振動や刺激として伝えられる。舌に伝えられた刺激の強さの違いから、対象物の形や動き、大きさ、自分との距離などが認識できるという。

 使いこなすには1年程度の訓練が必要とのことだが、手術による埋め込みが不要な上に、失明の原因にかかわらず使える利点は大きいと考えられている。

ロッククライミングもできる?

 FDAによると、「Brain Port V100」の訓練を終えた74人が参加した研究で、69%が物体認識テストの成績が良好と判定された。重大な事故や副作用はなかったが、舌先に着ける電極の灼熱(しゃくねつ)感や刺激感、金属味などを訴える人がいた。

 過去の研究では、文字を判読できるようになったり、三目並べ(まるばつ)ができるようになったり、ロッククライミングのホールド(手をかける場所)を認識できるようになったりした人もいると紹介されている。ウィキャブ社の公式サイトでは、視覚障害を持つ米冒険家エリク・ウェイヘンメイヤーさんによる使用動画が視聴できる。

”舌で聞く”機器も開発中

 聴覚障害者に向け、”舌で聞く”機器の研究も進んでいるようだ。米コロラド州立大学の研究グループは現在、耳に装着したマイクで集めた音を電気信号に変換し、舌への刺激を通じて言語や音として認知させる装置を開発している。

 研究グループは、この機器が実用化されれば、人工内耳の適用が難しいと考えられてきた人にも適用が可能だろうと説明している。

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kenkohyakka

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