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園児や児童にアタマジラミ感染広がる…親に知識なく対応遅れ

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 保育園児や小学生の間で、頭に寄生するアタマジラミの感染が広がりつつある。繁殖力が強く、感染すると強いかゆみを生じる。シラミを知らない親が増え、発見と対処が遅れているのが感染拡大の一因とみられ、幼い子のいる家庭では注意したい。

 東京都内の母親は5月下旬、保育園に通う長男(5)にアタマジラミが見つかり衝撃を受けた。「頭がかゆいと言っていたけど、まさかシラミとは思わなかった」。慌てて長男と次男(2)の髪を丸刈りにして確認すると、成虫とフケのように小さな白い卵を見つけ、つまみ取った。

 埼玉県内の保育園では5月下旬から今月にかけて、園児7人が感染。保育士が毎日、園児の頭をチェックし、アタマジラミの成虫や卵がないか、確認している。アタマジラミの寿命は約1か月で、100個前後の卵を産む。繁殖力が強く、駆除は一苦労だ。しかも清潔にしていても頭と頭が接触するだけで簡単に感染するため、園長(59)は「昼寝の布団の間隔を広げるなど感染拡大防止に必死です」と話す。

 東京都によると、都内の保健所に寄せられたアタマジラミに関する2014年度の相談件数は1602件で、12年度の815件から倍増。07年度の1935件から減少していたのが、再び増加に転じた格好だ。今年度も、東京都品川区の公立保育園15園で発生するなど、各地で発生の報告がある。シャンプータイプやパウダータイプの駆除薬が市販されており、「大日本除虫菊」(大阪市)と「アース製薬」(東京)では14年の出荷量が前年の約3割増加した。

 アタマジラミに詳しい、まるやま皮膚科クリニック(東京)の丸山隆児院長は「感染すると頭に虫がいて驚き懸命に駆除するが、生死にかかわる重篤な事態にならないので対策が中途半端になりがちだ。流行すると自治体などの注意喚起でいったんは終息するが、アタマジラミの知識がない若い親や先生が増えると、また流行する」と指摘する。

 また、国立感染症研究所(東京)の調査では、抵抗力を持ち駆除薬が効かないタイプのシラミが見つかっている。そのため同研究所の冨田隆史室長は、「アタマジラミを根絶するのは難しいだろう。予防や駆除の正しい知識を持って対処してほしい」と話す。

 東京都豊島区の池袋保健所では、保育園長に講習をするなど対策に力を入れる。家庭での対処法(図表参照)は、東京都が作成した冊子「アタマジラミ読本」や製薬会社のホームページなどが参考になる。(矢子奈穂)

 アタマジラミ 体長1~3ミリほどの昆虫で、人の頭に寄生して頭皮から血を吸って繁殖する。頭と頭の接触や、タオルや帽子の共有などで感染する。症状はかゆみ。成虫は髪にしがみつき、卵も粘着力があり、洗髪では落ちにくい。駆除薬や専用のくしなどで駆除する。

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