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[動き出す予防医療]世界で進むゲノム解析

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 米国は今年1月、100万人の全遺伝情報(ゲノム)を解析する計画を発表しました。遺伝情報や生活習慣と病気の関係を調べる大掛かりなプロジェクトです。

 多数の人のゲノムを調べて、病気の早期発見や予防に役立てる取り組みは、各国で盛んに行われています。デンマーク領フェロー諸島では2012年から全島民5万人のゲノム解析を実施しています。英国では2014年に国民10万人のゲノム解析を始めました。中東カタールでは国民病となっている乳がんの早期発見や肥満・糖尿病の予防治療に役立てるため、国民約30万人のゲノム解析の準備を進めています。日本でも、東北大学で15万人を対象にしたプロジェクトが進められています。

 人々の遺伝情報の違いと病気の関係を統計学的に調べることは重要です。DNAの文字の個人差と体質の関連が統計的にわかれば、自分自身の遺伝情報と照らし合わせて、疾患リスクを見積もることができるからです。また、薬の効きやすさや、副作用のリスクも遺伝的体質と関係しています。

 例えば、一部の薬を服用した時に、スティーブンス・ジョンソン症候群という重篤な薬疹を起こしやすい遺伝型の人がいます。治療が遅れると最悪の場合、死に至る重大なものです。また、失明などの重大な結果になることもあります。私が学生の頃、この副作用は避けようがありませんでした。しかし、今や遺伝型と副作用の関係がわかるので、特定の遺伝型を持っている患者さんに別の薬を処方する可能性が開けました。

 現在、薬と遺伝的体質に関するデータはすごい勢いで蓄積しています。このようなデータを病院での診療に生かすことはできないものかと模索しています。(林崎良英・理化学研究所プログラムディレクター)

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