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性暴力救援センター・大阪 加藤治子代表(1)病院拠点に心と体をケア

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 性暴力被害者に24時間態勢で対応し、心と体のケアを提供する全国初の支援窓口「性暴力救援センター・大阪」(通称SACHICO=サチコ)が、大阪府松原市の阪南中央病院に開設されて5年を迎えた。この間に受けた電話相談は約2万3000件に上り、983人が来所した。代表で同病院産婦人科医の加藤治子さん(66)に、被害の実態や支援について聞いた。(佐々木栄)

かとう・はるこ
 1949年、大阪市生まれ。大阪市立大医学部を卒業後、75年から阪南中央病院に産婦人科医として勤務。2010年4月、性暴力救援センター・大阪(SACHICO)を設立。性暴力救援センター全国連絡会の運営にも携わり、各地のセンター設立をサポートしている。
「被害者の思いを尊重しながら、さまざまなサポートを」と語る加藤医師(大阪市阿倍野区で)=若杉和希撮影

 ――設立の経緯は。

 30年前、院内に作った社会的ハイリスク妊産婦の研究会が原点です。妊産婦に対しては、それぞれの生活背景を知った上で診ていくことが重要です。その考えに基づいて診察していると、10代や未婚での妊娠、経済的困窮、家庭内暴力(DV)に悩む妊婦には、性暴力の問題が潜んだケースが数多くある現実が見えてきました。女性の性を守るのは産婦人科医の責務だと痛感したのです。長らく、こうした分野には光が当たらず、対応もお粗末でした。女性の社会進出、国際的な女性の権利擁護運動の盛り上がり、2001年のDV防止法施行など、社会の変化とともに必要性が認識されていきました。女性の体と性の問題に取り組む大阪の女性たちとのつながりもでき、議論を重ねるうちに、自然と「性暴力被害者を総合的に支える医療が必要ではないか」という結論に至り、2010年4月、ワンストップ支援センター設立にこぎ着けました。


 ――どんな支援を。

 支援員が常駐し、産婦人科医が24時間対応します。カウンセラーや精神科医、弁護士、警察、児童相談所などとも連携します。レイプや強制わいせつ、子どもへの性虐待、配偶者や恋人からのDVの被害者に、緊急避妊や性感染症の検査、証拠採取など婦人科的な救急医療と、心のケアを提供します。初診は平均約2時間かかり、再診率は8割を超えています。性感染症など体の診療は約2か月間、継続して行い、並行して心の回復状態を観察し、必要に応じてカウンセリングや精神科につなぎます。日がたってから警察に行く人には、弁護士を紹介する例もあります。

 SACHICOで対応したケースでは、警察を通しての受診や、来所後に警察につながったケースは半数に満たないのが実情です。知人からの被害が多いことや、10代で被害に遭っていて親に知られたくない、といった理由で、警察への届け出をためらう人が少なくありません。せっかく警察に被害を届けても、「ついて行ったなら同意があったとみなされる」「家に入れたらダメですね」と言われ、「私が悪かった」と自分を責める結果になってしまうこともあります。

 被害直後、「警察に言えない」とSACHICOに来所するケースでは、本人の同意のもと、証拠採取を行います。精神的に落ち着いてから気持ちが変わって「警察に届け出たい」と申し出る人もいるので、こうしたケースも見据えて対応しています。刑事事件にできず、納得がいかない場合、弁護士に相談して民事訴訟を起こすケースもあります。被害者の思いを尊重しながら、さまざまなサポートをしています。


 ――5年間の相談対応実績は。

 電話相談は延べ約2万3000件、来所者の実数は983人でした。来所者の内訳は、レイプ・強制わいせつ被害が577人(レイプ455人、強制わいせつ122人)、子どもへの性虐待が213人、DV被害が94人などです。レイプ被害の1割超は、妊娠がわかってから来所しています。性感染症になった人も1割いました。被害後、72時間以内はピルで緊急避妊ができますが、こうした知識は社会で知られておらず、半数以上は72時間が過ぎてから来ています。また、夜間や未明など時間外の来所が6割を占めます。電話相談は1か月に平均400~500件あり、1日に平均2人程度の来所があります。約30人の支援員が、電話相談や付き添いを担当しています。

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