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MERS阻止…初動万全に

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 韓国で急速に感染が拡大している中東呼吸器症候群(MERSマーズ)コロナウイルスが、日本国内にも飛び火するのではないかとの不安が高まっている。

 韓国で感染が広がった経緯をみると、最初の感染者が確認されてからの対応が後手後手になり、別の病室の患者や、その患者らが訪れた他の病院でも感染者が確認されるなど、三次、四次にまで感染が広がった。MERSへの認識が甘かったと言わざるを得ない。

 MERSは、2002~03年に中国を中心に感染が広がった新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARSサーズ)と同じ仲間のコロナウイルスが原因で起こる感染症だ。


隔離徹底が有効

浦島充佳(うらしま・みつよし)氏
 慈恵医大教授。専門は公衆衛生学。小児科医として臨床に携わりながら、新興感染症の流行などの危機管理対策を研究する。53歳。

MERSコロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所ウイルス第3部提供)

 韓国のMERSで30人もの院内感染を招いたのと同様、SARSの流行初期にも、1人の感染者が10人以上に感染を広げる「スーパースプレッダー」と呼ばれる患者がいた。SARSは発症5日以降、急速に感染力を増す。有効な治療薬やワクチンがないため、感染者を早く見つけ、徹底した患者隔離対策を取ることが封じ込めにつながった。

 MERSは、詳細はまだ分かっていないが、主にせきなどの飛まつで感染すると考えられており、重い肺炎を起こす点などSARSと類似する部分も多い。

 世界保健機関(WHO)と韓国の合同調査団は13日、人から人へと感染しやすくなるウイルスの変異は確認されなかったと発表した。基本的には病院内の患者、見舞いで訪れた人、医療従事者の感染にとどまっている。患者がどこで感染したかを捕捉できている状況を踏まえると、SARSの経験を生かすことができるのではないか。

 一方、韓国で感染者が確認された病院を訪れ、自宅隔離対象になっていた日本人が、通知を受ける前に帰国し、健康監視の対象になっていることが明らかになった。空港などでの水際対策には限界がある。対応が遅れた韓国の事例を教訓として、日本は国内で感染者が見つかった場合の初動対応に万全を期すべきだ。


早期発見へ緊張感

 そのためにはまず、最初の感染者を速やかに見つけることが重要だ。医療関係者だけでなく、国民レベルで公衆衛生的な意識を高めることが必要だ。

 発熱やせきなどの症状が出る2週間以内に中東や韓国に渡航歴がある人は、医療機関を直接受診せず、保健所に正直に告げてほしい。MERSだった場合、狭い待合室に居合わせた患者へ、知らずに感染を広げてしまう恐れがある。

 仮にMERSと診断されれば、病原体を外部に漏らさない設備がある感染症指定医療機関に入院して、早い段階で治療を受け、早くに回復することも期待できる。知らないうちに感染を広げる事態を防げるだけでなく、患者にとっても大きな利点だ。

 MERSかどうかわからない重症の肺炎患者は、原因の病原体が特定されるまで個室に入院させ、治療にあたる医療者は、目を覆うゴーグルやマスク、手袋などで十分に防護するなどの対応が必要だ。

 韓国で感染拡大が終息するまでには、しばらく時間がかかるだろう。極めて身近な国で感染拡大が起きている現在、国内の医療者らは、自分の外来を感染者が受診する可能性を想定すべきだろう。せきや発熱などの症状がある患者に対して最近2週間の渡航歴などを確認することが大切だ。当面、緊張感を持って身構える必要がある。(聞き手・医療部 野村昌玄)


MERS=Middle East Respiratory Syndrome
SARS=Severe Acute Respiratory Syndrome

 
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