茂木健一郎のILOVE脳
yomiDr.記事アーカイブ
運動を始められない人にアドバイス
さて、この連載をご覧くださっているみなさん、「ちょいデブ」ゾーンを挟み、スリム側に行ったり、デブ側に行ったりしながら、がんばっている私の日常の珍報告、いかがでありましょうか?
ランニングに加えて、暑い季節を乗り切るために、プール通いも始めた私。
なんとか、ミスター・スリムを目指して、これからも精進したいと思います!
そう、決意だけは、堅いのであります!!
ところで、私の周囲にも、この連載を読んでくださっている方がたくさんいらして、感想をいろいろと言ってくださるのですが、それらの方々のほとんどは、運動をしていません(笑)。
はい、そうなのです。この連載で、私が、運動することの大切さ、日々のランニングの喜びと
ちょっと待った~、それじゃあ、この連載の意味がないではないですか!(笑)
そもそもですね、この拙文は、「ヨミドクター」という、讀賣新聞の中の医療サイトの中の、コラムの一つとして、連載されているわけであります。
そこには、これからの社会において、健康や医療が、大事なテーマになっていく、という、大きな問題意識、ヴィジョンがあるわけであります。
長生きすることは、とても結構なことです。一日でも長く、この地上での生を楽しみたい。しかし、そのためには、身体も、脳も、健康で若々しく保ちたい。これは、みんなの願いであります。
アンチエイジングをする上では、運動が効果的であることは、さまざまなエビデンスでわかっています。
ですから、このコラムは、私という一個人が、運動に取り組む、という実験報告でもあるのですが、同時に、それを読んだ方々が、そうだ、私も運動しよう、私も健康に注意しよう、明日から、ニコニコ楽しい運動生活を、さあ、始めよう、と思ってくださってこそ、初めて、讀賣新聞がこの「ヨミドクター」というサイトを立ち上げた、その
このような観点から見れば、私の連載を読んで、それで、読者の方が、運動しよう、という気にならない、ということは、つまり、それ(思い切り改行)、
ダメじゃん!!!(笑)
「そのうちやろう」では結局やらない
そこで、今日は、私の身体づくりの話はとりあえず放っておいて、みなさんが身体を動かす気になるような、そんなお話をしようと思うわけであります。
それでこそ、ヨミドクターのこのコラムの意味もあるということでありましょう!
運動に限らず、何かを始める時に一番大切なことは、行動と自分の間に「壁」をつくらない、ということであります。
いつかやろう、そのうちやろう、と思っていると、結局やらないことになる。
極端なことを言えば、「やろう」と思ったら、1秒後に始める。
それくらいでないと、脳は、なかなか「やるモード」にならないのです。
実際、私は、「走ろう」と思ったら、即座に行動を開始します。ランニング・パンツに着替え、ランニング・シューズを履き、もう走りだしている。
仕事をしていて、ちょっと気分転換をしよう、と思うと、すぐに走り出す。この、間髪を入れないことが肝心です。
そのために、実はひとつ工夫していることがあります。ランニング・パンツは、もちろん、丈の短い専用のものですが、シャツの方は、ふだん着ているTシャツのままで、走りだす。そうすれば、いちいち、ランニング用のシャツを探さないで済みます。
身体を動かしたいのだけれども、なかなかできないという方に共通しているのは、運動の準備が大変だと思いこんでいること。結果として、障壁を作ってしまっている。専用のシャツがなくてはいけない、特別なウェアが
障壁を一つ一つ取り除く
もっとも、そんなことを言っている私自身にも、なかなか始められない運動の「壁」はありました。
走ることが難しいのならば、泳げば良い。ようやく、最近になって水泳を始めた私ですが、これまで、長い間、泳ぎに出かけることができませんでした。それと言うのも、途中の「手続き」が面倒だと感じていたからでした。
着替えるのが面倒くさい。パンツ、ゴーグル、帽子、タオルを用意するのが大変。プールのあるスポーツ・センターまで行き、着替えて、泳いで、また着替えるという手続きが、時間がかかりそうだ。そのようなイメージでいる限り、泳ぎをスタートできません。
夏のランニングは、暑さとの闘いです。つい先日も、走り始めた午前7時には、22℃と、比較的走りやすい気温にも思えたのですが、走り始めてみると、やがてじっとりと汗が出て、熱が身体にこもりだす。

そう、湿度が83%と高かったのです(写真1)。しかし、6月でこうなのですから、これから、7月、8月にはどうなってしまうのか。
これは、もうダメだ。泳ぐしかない。
いよいよ本格的に泳ごう、と決めてから、私は、一つひとつの障壁を消していきました。専用のスポーツ袋を用意し、帽子やゴーグルを用意し、水着やタオルを
そのように準備をし、障壁をなくすることで初めて、ある日、30分くらいの時間が空いた、と思った時に、ためらうことなく自然に、プールに向かうことができたのです。
実際に泳ぎ始めてしまうと、「なぜ、今までしなかったのだろう」と思えるくらい、楽しい。
そう、外がいくら暑くても、プールの中は快適で、思い切り身体を動かすことができるのです!
運動を手軽に始めるためには、「運動をしていない自分」を「運動をしている自分」につなげる道から、できるだけ障壁を取り除いていくことです。
私の場合、ランニングではそれができていたが、水泳ではできていなかった。
暑さの中でのランニングがきつい、と思うことで、ようやく、本気になって障壁を取り除くことができた。
結局、運動の習慣化とは、障壁を除去することです。
どうです? みなさんと運動の間には、まだまだ障壁がありませんか? その障壁を、一つひとつ具体的に取り外すことから始めましょう!
私のこのコラムが、みなさんがより健康に気をつけた生活を始める、一つのきっかけになれば、これほど