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最新医療~夕刊からだ面より

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慢性疲労症候群 脳の炎症も関係…客観的な診断法に期待

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 頭痛や微熱、筋肉痛など様々な症状とともに、激しい疲労感に襲われるようになり、生活に長く支障をきたす「慢性疲労症候群」。休めば回復する単なる疲れではなく、脳の炎症も関わる全身性の病気と分かってきた。客観的な診断法や治療法の開発が期待されている。


 慢性疲労症候群が一つの病気と認識されるきっかけは、1984年に米国で原因不明の激しい疲労や痛み、思考力低下などを訴える患者が集団発生し、本格的な研究が始まったこと。その後、各国で同様の患者が報告された。

 全身の倦怠けんたい感があり、体を動かす、ものを考える、感情を動かされるなど、普通の人なら負担にならない活動でも疲れは増す。感染症や免疫力の低下が原因とみられているが、はっきりしない。

 国内の推定患者数は24万~38万人。月に数日、自宅で休むことが必要な程度から、寝たきり状態まで症状には幅がある。最近の厚生労働省の実態調査では約3割がほぼ寝たきりだった。

 慢性疲労症候群という病名では、病気の深刻さが伝わらないことから、筋痛性脳脊髄炎という病名が使われることが多い。だが、筋肉の痛み以外に様々な症状があり、不適切との意見もある。

 米国では今年2月、多くの医師がこの病気に適切に対応できるように、専門家の委員会が9000以上の文献を調べ、新たな病名と診断基準を提案した。

 新病名は「SEID」。日本語訳は未定だが、直訳すれば「全身性労作不耐疾患」。体や脳の活動が、極度の疲労を中心とする全身の不調を引き起こすという意味だ。

 SEIDの診断基準は、〈1〉活動レベルの大幅低下が半年以上続き、休んでも回復しない疲労がある〈2〉運動や作業後に悪化する極度の倦怠感〈3〉睡眠障害――の三つの症状があることに加え、〈1〉認知機能の低下〈2〉めまいなどで立っているのが困難――の少なくとも一つがあるとした。

 日本でも米国の動きをふまえて来年3月、厚労省研究班が新たな診断基準を発表する。代表研究者の倉恒弘彦・関西福祉科学大学教授によると、従来の診断は症状の把握に頼っていたが、今回は最新の研究をふまえて客観的な診断指標も取り入れる予定だ。

 理化学研究所などは昨年、この病気の患者の認知機能障害、痛み、抑うつ症状などの程度が、脳の特定部位の炎症と相関していることを明らかにした。脳の炎症に伴って増える血中たんぱく質も見つかっており、血液検査で疑わしい人を絞って脳の詳しい検査を行えば、客観的な診断ができる可能性がある。

 治療は、漢方薬やビタミンCで体力や免疫力を上げたり、必要に応じて抗うつ薬の治療が行われたりするが、効果は確実でない。倉恒教授は「脳の炎症を直接抑える薬ができれば、根本的な治療になるかもしれない」と話す。

 最近、患者団体が期待を寄せるのが和温療法。15分の低温サウナの後、体を30分保温して深部体温を上げ、血流を促す。慢性心不全に対する先進医療だが慢性疲労症候群にも有効との報告がある。

 慢性疲労症候群患者に和温療法を行っている静風荘病院(埼玉県新座市)の天野恵子医師は、和温療法による患者の脳の変化を調べる共同研究を計画している。(藤田勝)


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