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日本乳癌学会、ランニング&ウォーキングイベント初開催…7月5日

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乳がん経験者や家族、友人、医療者が参加

 日本乳癌学会は7月5日に、乳がん経験者や家族、友人、医療者が参加するランニング&ウォーキングイベント「RUN&WALK for Breast Cancer Survivors」を初めて開催する。乳がんと闘う当事者や仲間を互いにたたえ合い、研究や支援の充実を訴えていく目的だ。イベント発案者で、自身も乳がんを経験し、サバイバー支援の会社やNPO法人を運営するランナーの桜井なおみさん(48)に、イベントにかける思いを語ってもらった。(岩永直子)。

◆◆◆

 自身も乳がんを経験しサバイバー支援の会社やNPO法人を 運営するランナー  桜井なおみさん(48)

 

 桜井さんが走り始めたのは、乳がんがわかって10年目の2013年7月のことだ。それまで水泳はマスターズの大会に出場するほど熱心に打ち込んでいた。

 「むしろ走ることは大嫌いだったんです。それでも、乳がんになって、胸の筋肉の一部も切除したので腕が上がりにくく、更衣室で水着に着替える時の周囲の視線も気になっていた。別の運動ができないかと漠然と思ってはいたんです」

 その頃、ほぼ同時期に乳がんとなった仲間が、「10年記念に、ホノルルマラソンに参加する」と言うのを聞き、何となく自分も始めることにした。最初は自宅の近所を700メートルぐらい。慣れていないせいもあって息切れしたが、思わぬ精神的な効果に驚いた。

 「ものすごく集中できるんです。悩み事とか仕事のこととか、集中して考えて、走り終えたらすっきりとする。水の中でも集中できますが、水泳の時は生きることに必死で、ほかのことを考えている暇は案外ない。走ることが楽しくなりました」

 どんどん距離は伸びていき、走ることは身体的にも爽快になってきた。今は1日5キロ走り、昨年は初めてフルマラソンを完走。街中を走るので、花の香りや人の服装、蝉(せみ)の鳴き声、顔に当たる虫の感触まで、屋内水泳と違い、季節を感じられる。走った後はおなかもすいて、おいしく食べられ、体重も増えた。

 「何より、精神的な整理整頓ができるのが私にとっては一番でした。走る距離は、ストレス度に比例して増えていきました。ビジネスマンで走る人が多いのは分かる気がします。日常から離れて、一人だけで集中して考える時間が持てるのがこれほど効くとは思いませんでした」

 走り始めた頃、フェイスブック(FB)で報告すると、サバイバー仲間や乳がんの専門医、製薬会社の社員らが、コメントを付けてくれるようになり、ランニングに関する情報交換のチーム「FBオンコランナーズ」を結成。おそろいのTシャツを着て、たまに集合しては皆で走り、学会で集まる度に誘い合わせて、朝に走るようになった。

米国シカゴで開かれた乳がんウォーキングイベントの様子

 昨年5~6月、シカゴで開かれた米国癌治療会議(ASCO)では、FBオンコランナーズ仲間で、旧知の腫瘍内科医、勝俣範之先生と、朝6時に待ち合わせて会場周辺をランニング。すると、早朝にもかかわらず、大勢で盛り上がるハイテンションな声が近くから聞こえてきた。

桜井さん(左)と勝俣先生(米国シカゴで)

 「なんだろ? 行ってみようか?」

 その声の方向に走り寄って行くと、開場隣の敷地で、化粧品会社主催の乳がんサバイバーのラン&ウォーキングイベントが開かれていた。ステージの上ではサバイバーが研究支援を呼びかけ、遺族が思い出を涙ながらに語っては、その度に、皆がたたえる声を上げている。会場のそこかしこには、再発・転移がんの治療研究支援を訴える立て看板や、男性乳がんの啓発などを呼びかける看板が。また、2日間で39マイル走るというこの会場のゴールポストには、乳がんと闘った家族や仲間に対してたたえる言葉が書き込まれていた。

 I LOVE & MISS  YOU  MAMA
 YOU ARE ALWAYS IN MY HEART
 (ママ、愛しているし、会いたいよ。あなたはいつも私の胸の中にいるよ)

 「こんなイベントが、がん研究の最新成果を発表する学会の会場のすぐ隣で行われているんですよ。感動しました。日本の乳がんイベントは、検診や早期発見ばかりに焦点が当てられますが、ここでは頑張って闘ったけれども先に逝った仲間の生をたたえて、治療や研究の発展につなげようとする姿勢がある。『日本でもこういうのをやりたい! やらなくちゃ』と、勝俣先生と興奮して話し合いました」

 帰国するとすぐ、桜井さんは聖路加国際病院のブレストセンター長、山内英子さんに話を持ちかけ、大賛成した山内さんは、日本乳癌学会理事長で今年の学術集会大会長である昭和大学ブレストセンター長の中村清吾さんにも相談。「ぜひ実現しましょう」ということになり、学会初のイベントが開かれることになった。

 桜井さんは、「今年はまず開催するのが目的ですが、今後は治療やサバイバーシップの研究支援のための寄付などにもつなげたい。がんで亡くなった人のため、今がんで闘う人のため、これからがんになる人のため、そして周りにいる支援者のために一つになりませんか」と参加を呼びかけている。

イベントを前に東京・大手町周辺で練習に励む桜井さん
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