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茂木健一郎のILOVE脳

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ついに水泳開始、プールサイドで「あれれ???」

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 さてさて、前回お知らせしたように、私は、「脱ちょいデブ」を目指すために、ついに「水泳」を始めたわけですが、その経過をご報告するその前に、今、学会出席のために滞在しているフィンランドの首都、ヘルシンキについて。


 いやあ、涼しいんですよ。そして、夜中、空が白く、真っ暗にならないのです。

 ヘルシンキは、北緯約60度に位置。太陽が沈まない、いわゆる「白夜」が起こるのは、北緯66.6度以上だとされていますが、ヘルシンキも、今は夏至に近く、太陽が沈んでも、まだ空が明るく感じられます。

 時差のため、こちらの時間で午前1時とか2時に目覚めてしまっても、外を見ると空が真っ暗ではない。

 「ああ、明るいなあ」と思って、それからまた眠ってしまう。

 朝、たとえば午前6時にランニングに行くと、もうすでに昼間の太陽の雰囲気です。

写真1

 教会の尖塔にも、明るい光が当たっています(写真1)。

 朝の気温は10度くらいのことが多く、今も蒸し暑いであろう日本から見ると、うそのようです。


 ああ、そうでした。

 日本のことを思い出した!

 私は、暑い日本の夏でも、それでもトレーニングを続けるために、水泳を始めたのでした!

 フィンランド滞在中の私ですが、こうして、記憶は一転して、東京のスイミングプールへと戻っていきます。

 夏のトレーニングの場として目をつけた、とある公立のスイミングプール。いよいよ、泳ごう、と思って、ある平日の午前中に出かけました。


やっぱり、水泳はいいんだ!

 着替え室からシャワーを浴び、プールに行くまでの間、すでに「ある事象」に気づいていたのですが、プールサイドに立つと、ますます、あれれ??? みたいな感覚になりました。

 というのも、平日の午前中ということもあってか、いらしているお客さんは、比較的シニアの方が多かったのですが、みなさん、なんというか、身体を鍛えていらっしゃる!という感じなのです。

 どことなく、サーファー(というか元サーファー? いや、現役かもしれない!)という風情の方がいらっしゃいます。動作がキビキビとして、いかにも、水泳歴五十年!みたいな方もいらっしゃいます。

 私は、プールに来るのが久しぶりなので、どこか慣れていなくて、ドギマギしているのですが、プールの中でゆったりと泳いだり、プールサイドを歩いたりしているシニアの男性方が、皆、一様に、ムキムキで、贅肉ぜいにくのない身体をしていることに、強い印象を持ちました。

 やっぱり、水泳はいいんだ!

 泳ぐと、身体が引き締まるぞ!

 私は、自分の、「暑い夏は泳ぐ」作戦が正しいことに、この時点で、確信を持ちました。

 よし、泳ぐか!

 プールに入り、平泳ぎで進み始めました。


 おや!?

 こんなはずではないのに!

 泳ぎ始めてしばらくして襲ってきた違和感。

 水泳って、こんなにキツかったっけ?


 25メートルのプールを、平泳ぎで1往復、2往復、とするうちに、なぜか、息が上がって、ついにはコースの端に立って、ぜえぜえと、肩で息をするような始末。

 正直、いつも走ってはいるわけですし、心肺機能はそれなりに鍛えられているわけですから、25メートルプールを何往復かしたくらいで息が切れるなんてことは、全く想定していませんでした。

 ところが、平泳ぎをしていて、そんなに距離を泳いでいないのに、もう身体が疲れてきているのです。

 ううむ。参った。

 おそらく、普段と違う筋肉を使うために、身体が慣れていないのでありましょう。


恐るべき「ビート板おじいさん」

 さらに疲労感に輪をかけたのが、ある恐るべき「ビート板おじいさん」の存在です。

 バタ足などの練習をするために使われるビート板。

 私と同じコースに、ビート板につかまり、平泳ぎの足みたいなフォームで、ゆったりと泳いでいらっしゃるおそらく80歳くらいと思われる男性がいらしたのです。

 ご高齢でもあるし、きっと、ゆっくりのペースで泳いでいらっしゃるんだろうな。うんうん、私も、あの方のペースに合わせよう。

 そのような、大きな気持で、平泳ぎをして、25メートルコースの反対側まで行って、顔を上げたその瞬間です。


 ヤバ! ビート板おじいさんが、もう、迫ってきている!


 右側通行のプールのコースで、こちらが余裕を持ってペースを合わせるどころか、ゆったりとビート板につかまって泳いでいると見えた男性が、思いの外の速さで、すぐそこまで来ているのです。

 恐るべし、ビート板おじいさん!

 きっと、蹴り足の効率がいいのでしょう。

 私は、あわてて、再び平泳ぎを始めました。

 情けないですね。「上から目線」で、ビート板おじいさんにペースを合わせてあげよう、と思っていたのが、逆に追い立てられるなんて!

 そんな風に泳いでいると、突然、中学3年生の時、水泳部として学校代表で水泳大会の200メートル平泳ぎに出た時の、苦しさがよみがえってきました。

 確か、8選手中4位で予選落ちしたのですが、あの時の200メートルは苦しかった。


 水泳は、走る以上に、身体への負荷がかかります。

 ということは、身体を鍛える効果も大きいということ。

 あくまでも、無理をしない範囲で、ということですが!


 うん、いい!

 水泳はいい!

 これからは、不肖私、ビート板おじいさんを大先輩として尊敬し、東京の暑い夏を、時々水泳に出かけて身体を鍛えようと思うのです!


 目指せ、脱、ちょいデブ!


 さてさて、そうは言うものの、この原稿を書いてから後何日かは、まだまだ、ヘルシンキに滞在するので、その間、せいぜい涼しい気候を味わっておこうと思います。

 嵐の前の静けさ、ならぬ、暑さの前の涼しさ!

写真2
 
写真3

 ところで、ヘルシンキで目について、かわいいのは、鳥たちです!(写真2、写真3)

 鳥さん、君たちは知らないだろうけど、日本というそれはそれは夏が暑い国から、ぼくは来ているんだよ!

 日本に帰ったら、プールでがんばって泳ぐから、それまで、ここヘルシンキでは、君たちといっしょに、この涼しい空気を味わっていいかい?

 それにしても思うことは、当たり前ですが、野生の鳥には「デブ」も「ちょいデブ」もいないということ。

 ああ、文明によって堕落させられた人間というものは!

 鳥さんたちを見習わなければ、ダメだぞ!!

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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