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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

目鳴りなら、思い切って片目生活も…デザイン眼帯・遮閉眼鏡で

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 目鳴りは加齢黄斑変性だけに起こるのではありません。網膜、視神経などの病気で片目の視機能が明らかに低下したり、目の位置を狂わせるような事態(専門用語では後天的斜視)になったときは、多少なりとも必ず生じます。つまり、左右の目のバランスが崩れてしまった場合です。

 崩れると、両目で見ることが困難になります。両目からの視覚信号が脳に入力されることで、距離感や立体感を測定する「両眼視機能」という大事な機能がありますが、それが損なわれ、少しの段差でつまずいたり、お茶やビールをうまく注げなくなったりします。

 片目で階段を駆け下りれば、多くの人が転んだり捻挫したりするでしょう。そういうことが起こるわけです。

 左右の目のバランスが崩れても、治療などで目鳴りのボリュームが下がれば、両目を開けて生活でき、完全ではないにしても両眼視機能が働くかもしれません。 

 しかし、両眼開放視が出来ても、両眼視機能が作動しているとは限りません。目鳴りを脳の方で抑制して、片目からの信号の入力を停止させてしまう機構が働くことがあるからです。また、自分では意識せずに、片目を閉じたり細めたりしてよい方の目だけでみている人もあります。これだと距離感、立体感がわからず、視覚を利用した視覚生活の質は落ちますが、両目を無理に開けて不快さに悩みながらの生活よりはずっとましです。

 こうした方には、片眼帯をすることを勧めます。通常の白い眼帯では、いかにも「眼病でござい」と宣伝しているようなものですし、半永久的に使うので気分的にもよくありません。

 外国で交通事故に遭い、後天的斜視で目の位置がずれただけでなく、ものが2つに見え(複視)、脳が混乱してふらついて(混乱視)困っていたデザイナーの女性が、自分用に「デザイン眼帯」を作りました。洋服に合わせた色の地に小さな刺繍ししゅうをあしらった素敵すてきなものです。耳掛け式でなく頭掛けなので、耳の後ろが擦れて痛くなることもありません。同じような悩みの方用に実費で作ってくれます。「kanaeye」で検索してみてください。

 私は東海光学(株)と共同で、外見的には隠しているのが目立たない片目を遮閉する眼鏡を新作し、特許をとりました。「オクルア」という商品名で検索していただくと情報が出てきます。

 治療している目を隠して生活するという話は眼科医としても、患者としても大きな抵抗があるでしょう。しかし、目鳴りだとわからずに、視覚生活の不快さですっかり意欲をなくしていた方が、思い切って片目生活にしたことで症状が軽減し、元気になったという事例を、私は何十例も経験しています。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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