心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
「耳鳴り」ならぬ「目鳴り」…視覚の雑音の正体は?
耳鳴りは、誰でも知っているし、実際に体験がある人も多いでしょう。勝手に何か存在しない音が聞こえる状態で、我々にとっては雑音でしかありません。
実は、「目鳴り」というべき、視覚の雑音もあります。
両眼に入った視覚信号は脳に送られ、そこで最終的に認識したり、記憶と対比したり、言葉にしたりします。ものは眼で見ているのではなく、脳で見ているといってもよいでしょう。
ところが、よい方の目からはきれいな画像が脳に入ってくるが、病気の側からの画像は
健常な人なら、合わない眼鏡のレンズを片目に掛けた状態を想像して下さればいいでしょう。そちらの目の画像は邪魔になり、見ていられず目をつぶりたくなるに違いありません。これが、私のいう「目鳴り」です。目をつぶるとは、目鳴りを排除しようとする行動にほかなりません。
ところで、前回紹介した高橋政代さんらのグループが、今対象にしている病気は、
治療は、網膜光凝固、光線力学療法、新生血管の増殖を抑える薬物(抗VEGF薬, VEGFとは血管内皮増殖因子のこと)の硝子体内投与、新生血管板の手術による除去などいろいろなことが試みられてきました。今では、抗VEGF薬の投与が主流ですが、繰り返し投与が必要で、それでもなかなか新生血管の活動を止めにくいことがあります。
そういう難治例に対して、手術と、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の網膜色素上皮を移植したのが高橋先生たちの仕事で、画期的な成果でした。
ただ、医師がうまくいったと言っても、患者として、大してよくなっていない、ほとんど変わらない、あるいは
片目の加齢黄斑変性では、そちらの目に必ず「目鳴り」が生じます。
目鳴りがあると、見えにくい以外に「
この病気では、治療が成功したとしても、病気自体がすっかりなくなって元通りの目になるということではありません。患者の側がそこを間違えて理解すると、医師患者間にとんだトラブルになることがあります。
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