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茂木健一郎のILOVE脳

yomiDr.記事アーカイブ

「ルームランナーの誘惑」に負けそう?

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 5月下旬、仕事で、北海道の旭川に行き、いつものように「旅ラン」をしました。

 中心街にある旭川グランドホテルから、少し走ったところにある「常磐公園」を目指し、そこから石狩川のほとりをさらに走っていくコース。

 当日、東京をはじめ日本各地は最高気温30℃以上の暑い日でしたが、旭川は、ランを終えた午前10時過ぎの時点で、14.9℃。

写真1

写真2

 ちょうど走りやすい、天国のようなコンディションで、おっちらさっさと走りました。

 旭川市民の憩いの場所、常磐公園は、ほんとうに緑がきれい(写真1)。東京近辺ではもう咲き終えてしまった藤の花も、ちょうど満開(写真2)。

 日本は広い。自然は美しい。北海道はいいなあ。

 旅ランを満喫する瞬間です。


 思うのですが、テレビで「旅ラン番組」というのは、十分に成立するのではないでしょうか?

 リポーターが旅先に行き、スニーカーに履き替えると、いきなり走りだす(笑)。

 走りながら、「あっ、あそこに公園がある!」とか、「おいしそうなレストランですねえ」とか言いながら、とにかくぐるぐる回る。

 そうやって、走り回りながら、いわば、身体で直接感じる視点で、その土地を味わい尽くすのです。

 よくある「旅歩き」の番組より、「旅ラン」の番組の方が、収録にかかる時間も短いし、映像にもスピード感があって、いいのではないでしょうか。

 「旅ラン」番組、行けると思うんだけどなあ、シリーズで。

 まあしかし、冷静になって頭の中でシミュレーションすると、ランナーを追いかけるカメラの人が大変そうだし(映像ガクガク!!!)、また、ランナーにマイクをつけて走って、果たして音声的にきちんと拾えるのかなど、技術的な課題がありそうです(笑)。


「思わぬ出会い」が旅ランの醍醐味

 そのような妄想はともなく、旅ランの醍醐味は、「思わぬ出会い」、「意外な発見」。

 旭川市民の憩いの場、常磐公園を走っていると、とても心をかれる彫刻(パブリック・アート)が目に入ってきました。

写真3

写真4

写真5

 大きな半円形の土台の上に、たくさんの人々が一列に並んでいます(写真3)。

 前に置かれたプレートを見ると、1989年制作、三木俊治さんの『行列』という作品です(写真4)。

 へえ、これ、いいなあ。

 一目見て、素敵すてきな作品だと、気に入ってしまいました。

 上に行列している人々の表情も、魅力的で(写真5)、それまでの運動モードが、突然、美術鑑賞モードになってしまいます。

 このような予想もできない出会いがあるのが、「旅ラン」の一つの魅力と言えるのでしょう。

 旅ランの途中で、素敵なパブリック・アートの作品が、もっと見たくなります。

 結局、このようにしてあっちへふらふら、こっちへふらふらと立ち寄りながら、その日は、旭川市内約10キロを、57分59秒で走りました!

 実にたのしい、旅ランの時でありました。


 さて、こうして旅ランを続けている私ではありますが、その一方で、しばらく前から気になっていることがあります。

 それは、果たして、いわゆる「ルームランナー」の走り心地は、どのようなものであるのか、ということ。
 (「ルームランナー」は「トレッドミル」とも呼ばれるようですが、以下では、「ルームランナー」という呼称を使うことにします)


暑すぎる夏をどう乗り切るか

 私の友人や知り合いの中には、「走っているよ、ルームランナーで」という人が多い。

 自宅で、というよりは、スポーツクラブで、ひたすら、ルームランナーの上で走っているらしいのです。

 ホリエモンこと、堀江貴文さんなんかもその一人で、先日も、「茂木さん、昨日は20キロ走りましたよ」というので、「えっ、どこをですか?」と聞いたら、「スポーツクラブで、3時間かけてゆっくり走りました」という答え。

 もともと、私は、運動は絶対に屋外でやる派で、室内で走っても、景色は変わらないし、つまらないし、イヤだ、と思っているのです。

 特に、「旅ラン」のような楽しみが、ルームランナーにはない。

 それでも、最近、ルームランナーの走り心地が気になる。

 なぜ、もともとアウトドア派の私が、こんなにも「ルームランナー」に関心を持っているのかと言えば、それは、ずばり、「気温」の問題。

 地球温暖化の影響があるのかどうか、最近、東京の夏は大変暑いです。

 気温が高い中で走るのは、かなりキツイ。何よりも、トレーニング効果が上がらない。

 今回の、10℃代前半という快適な旭川での「旅ラン」を経験してしまった私は、改めて、「そういえば、ルームランナーは、エアコンが利いたスポーツクラブの中で走るんだから、暑くなくて、快適だろうなあ」と思ってしまったのです。

 これからの東京の夏。暑い季節を、アウトドアでランニング派の私は、一体、どのように乗り切ったらいいのか。

 旭川での楽しい旅ランの余韻に浸りつつ、「さあ、どうしよう」と迷いが生じます。

 そんなときに、「絶対にイヤだ!」と思っていた、あのルームランナーが、「こっちはいいよ、快適だよ、おいでおいで!」と誘ってくるのです。

 暑すぎる夏に、ルームランナーの誘惑。

 嗚呼ああ、どうしよう!

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茂木健一郎の I love 脳_profile写真

茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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