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[動き出す予防医療]先端技術 冷静な判断必要

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 みなさんは、「GATTACA(ガタカ)」という映画をご存じですか。遺伝情報に基づく差別をテーマにした作品です。これはフィクションですが、この映画を見て、遺伝情報を扱うのはコワイと感じた人も多いことでしょう。

 先端技術が社会に受け入れられるには、技術の安全性や有効性だけでなく、倫理、精神的風土、宗教なども考えなければなりません。この初期段階を誤ると、優れた技術を手にしても、人々が恩恵を受けられなくなってしまいます。

 私自身がそのような実感を持ったのが臓器移植です。1999年、私の大阪大学の同期生の福嶌教偉のりひで先生が日本で2例目の心臓移植手術の主治医を務めました。1例目は移植医療システムがない68年のことでした。システムがない時代とはいえ、当時の医療チームが重症心不全の患者さんに心臓移植を施行した際にとった脳死判定法やドナー・レシピエントへの説明が問題視され、国民の移植医療不信につながりました。国民の不信感の中、その結果を反省して国民に認められる移植医療システムを構築するのに、30年もかかりました。この空白の30年の間に、海外では助かる命が日本ではむなしく失われました。マイナスの時間を乗り越えて、手術を成功させた阪大の心臓移植チームの肩にかかった重荷は想像を絶するものであったと思います。

 遺伝情報に基づいた予防医療も新しい医療です。個人の遺伝情報は究極の個人情報であり、慎重になるのは当然です。保険や就労、婚姻などで差別が起こらないように議論と対策が必要です。一方で、過度に慎重になって、科学技術の恩恵を受けられなくなっては本末転倒です。何事も、冷静な判断とバランス感覚が大切だと考えます。(林崎良英・理化学研究所プログラムディレクター)

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