予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
医療・健康・介護のコラム
ポジティブな人は早く死ぬ?
こんにちは。
予防医学研究者の石川善樹です。
今回は「ポジティブって、そんなに素晴らしいのか?」という話をさせてください。
そもそもの発端は、「最近、元気がないんです・・・」という後輩の一言から始まりました。さっそく近所の本屋に行って、「元気が出る本を探そう」ということになり、何冊か買ってパラパラ見ていると、やはりというか、どの本にも「ポジティブ思考が大事!」という話が書いてありました。
後輩はそれを見て、「やっぱりポジティブにならなきゃですね!」と奮起していたのですが、その姿を見ていて、ツライ時に無理やり明るく振る舞うのって、何か不自然な感じがするなと思ったのです。
改めて考えてみると、よく「ポジティブに考えよう!」と迷信のように言われますが、実際のところ、どうなのだろうかと疑問に思えてきたのです。
とはいえ、過去の研究データが一貫して示しているのは、「ポジティブな人は仕事やプライベートで成功しやすいし、健康で長生きする」という結論です。しかし、何か落とし穴はないものだろうか? そう思っていろいろと調べてみると、「ターマン研究」と呼ばれる面白い研究に出合いました。
「ターマン」というのはスタンフォード大学の先生です。1921年、当時10歳前後の子どもたちを約1600人も集め、なんとその後80年にわたって追跡調査を行ったのです(ターマン先生は、志半ばで帰らぬ人となりましたが、その弟子たちが研究を続けたのです)。
性格と寿命の関係
ターマン先生が知りたかったことの一つに、「子どもたちの性格と寿命の関係」があります。たとえば、子どもたちが次のような性格を持つかどうか、調査しました。
・陽気で楽観的 |
そして分析してみると、なんとも意外なことに、「楽観的で社交的な人ほど早死に」していたのです。
というのも、過度に楽観的でポジティブな人ほど、日常生活のあらゆる場面で「まあ、大丈夫だろう」と、慎重さに欠ける判断をし、結果的に不健康な生活習慣を送ったり、交通事故などで亡くなっていたのです。
また、小さいころから学校の人気者だった人ほど、付き合いなどからアルコールやタバコに手を出し、早死にしていました。
その一方、一番長生きしていたのは、「真面目で粘り強い性格の人たち」でした。彼らは、人生でツライことや問題にぶつかっても、決して逃げることなく、粘り強く受け止めて前に進んでいたのです。
・・・この研究結果は、とても興味深いことを示唆していると思います。繰り返しになりますが、「ポジティブな人は長生き」です。しかし、「ポジティブすぎると短命」になるようです。つまりバランスが大事なのであって、だからツライことがあったとしても、無理に「ポジティブ!」と気を張ることはないようです。過度なポジティブさは、ただ現実の問題から逃げているのと一緒なのかもしれません。
むしろ困難なときこそ、粘り強く、慎重に生きていくことが、遠回りのように見えて、長寿への一番の近道なのでしょう。
盲目的に「ポジティブ!」と肩ひじを張るのではなく、つらい時はそのつらさをかみしめ、地道に一日一日を重ねていくことが大事なのかもしれないねと、最近、少し元気になってきた後輩と話しています。
それでは、また次回!
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人の寿命と幸福度
しんちゃん
ポジティブが良いのか悪いのか、 単に寿命だけで考えるのもどうかと思います。ネガティヴな人は危機管理能力が高いので 危険な目にあった時無茶な行動を...
ポジティブが良いのか悪いのか、
単に寿命だけで考えるのもどうかと思います。ネガティヴな人は危機管理能力が高いので
危険な目にあった時無茶な行動をしないだけで、その先幸せになるかどうかはわからない。要するに、人生の幸福度が重要で、
その次が寿命だと思います。
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どうだろう…
カナッペ
人の気持ちなどあまり深く考えない。 ポジティブというか、悩まない 自分の感情に正直で、わりと平気で 言いたい事言ってくる。 常に自分が一番有利に...
人の気持ちなどあまり深く考えない。
ポジティブというか、悩まない
自分の感情に正直で、わりと平気で
言いたい事言ってくる。
常に自分が一番有利になる形になる
ように考え、行動する。かなり楽観
的で、人のために行動する事は稀
(仕事なら別)
上記のタイプほど、出世が早かったり
長生きする。
ポジティブだけど神経質で、慎重すぎ
る人の方が、癌などにかかりやすかっ
たり、免疫が弱かったりする。
後、運の強弱もあったり。あくまで
統計学としてだけ、記事は読みました
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それって、実りのない研究テーマでは?
無量てんびん
いや「どーにかなる」と「どーにでもなれ」はホント 紙一重!だからなあ。 もういいよ、ナンとでもなれ、と諦めきって貧困(負け組ライフ)に甘んじてる...
いや「どーにかなる」と「どーにでもなれ」はホント 紙一重!だからなあ。
もういいよ、ナンとでもなれ、と諦めきって貧困(負け組ライフ)に甘んじてる自分のような人は、きょうびの世の中、結構いると思う。
『ポジティブ志向』と『上昇志向』は似て非なるもんだし、ましてや健康の度合いや寿命との因果関係は薄いと思うよ。些細な体調でも いちいち苦にして病院に通い詰めてるばっかりで、結局80も90も越えちまった年寄り、身近に多いし。
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